僕の名前は、コオル・リアロ。マグストラタム学園に通う特待生だ。
名前はまだない、なんてもう言わせないぞ。

 

ビルギエッタ師匠（以下師匠）：なに力説してんだいバカ弟子。
　コオル：し、師匠、一体どこから現れたんですか？
　　師匠：どこからって、挨拶だね。ここはあたしの研究室だよ。あたしがいちゃまずいかい？
　コオル：い、いえ、出かけるから大掃除しとけっていって聞いたのに、もう帰ってきたのかなって。
　　師匠：もう、っていうほど早くも帰ってないけどね。おまえの作業が遅いんじゃないのかい。
　コオル：師匠〜。
アスレイ：まったく。 何を騒いでるのかと思えば。
　コオル：アスレイ、もうそっちは終わったの？
アスレイ：当然ですわ。
　コオル：とほほ…あとは僕の受け持ちのところだけなんだ。
　　師匠：そうみたいだな。
　コオル：ところで師匠。
　　師匠：なんだバカ弟子。
　コオル：どうして急に大掃除をやろうなんて言い出したんですか。
　　師匠：ああ、そのことか。その理由なら、むしろ、おまえの方がよく知ってると思っていたぞ。
　コオル：僕の方が？
　　　晶：…出来たぞ。
　　　結：…あ、あの……その……ええと……あの…。
アスレイ：なんで召喚獣がここにいますの。
　コオル：それは、僕が手伝いに呼んだからだよ。師匠が５人ともあつめとけっていうから。
　　マキ：みなさん〜大掃除も休みながらやりましょう〜
　　　結：…あ、はい…そうですね。いま…お茶に…しま…す……
　　　晶：茶菓子なら用意してある。
　コオル：流石晶に結だね。
　まどか：窓は拭き終わりましたよ。
　　卯月：内側はボクがやったんだからね。
　コオル：ありがとうみんな、おかげで助かったよ。
アスレイ：終わってないのは、あなただけですわ。
　コオル：…ま、まあ、後でみんなに手伝ってもらうから。
アスレイ：なんでも召喚獣だのみですのね。
ルテジア：そこまで言わなくてもいいんじゃない。召喚獣を使うのが、召喚術師でしょ。
　　師匠：来たかルテジア。
　コオル：だから、なんでルテジアまで？
　　マキ：うふふ〜それは、秘密です〜。
ルテジア：聞いたとおりの飾り付けをしておいたわよ。
　コオル：飾り付けって？
　　師匠：それは、ここの作業が終わってからだな。
　　卯月：でも、その前に一休み。
　　　結：…え、はい……そうですね……どうぞみなさん…ぬる茶です…
　まどか：卯月、さすが気が利くね結、ボク、のどがからからなんだ。
　　マキ：次はすこし熱めのお茶なんですね〜
　　　晶：最後は熱い茶になる。石田三成風のおもてなし。
　コオル：石田三成ってだれなの？
　まどか：お茶を入れるのが得意だった戦国武将です。
　コオル：それじゃ全然わからないよ。
　　　晶：特に知っておく必要もない。
　　マキ：説明しようとすると、私たちの世界の歴史の説明からになりますね〜。
　まどか：まあまあ、難しい話はいいじゃない。とにかく、お茶にしよう。
　コオル：あ、そうだみんな。
　まどか：なんですかコオル。
　コオル：…うう…名前があるっていいなぁ。
アスレイ：何を当たり前のことに感激してるのかしら。
　コオル：僕は今まで決して名前を呼ばれることのないキャラの悲哀を味わってきたんだよ。
ルテジア：あれは、あんたとは違う別人のことでしょう。気にしないの。
　コオル：うん、そうだねルテジア。

 

　僕らはしばらく、お茶会を楽しんでいた。
そうだ、この休憩時間のうちに、ちょっと楽屋裏の話もしちゃおうかな。

 

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マスター：というわけで、こっちが楽屋裏だよ。
　まどか：楽屋裏っていっても、エターナルガールコーリングの世界の意味ですよね。
マスター：うん。発売前ＳＳの話をここでやっちゃおうかなって思って。
　　卯月：あれボクものすごく不満なんだけど。
マスター：え？なにが？
　　卯月：あのお話じゃまるでボクがバカみたいじゃない。
　　マキ：本編でも脳筋熱血娘には違いないですよ〜。
　　卯月：あんたね。
　まどか：本編は、マキがさん付けで、ルテジアさんが呼び捨てなんですね。
　　マキ：マキさんは一人称がマキさんだからでしょう〜。
マスター：でも、まどかや卯月やマキさんはそれほど違ってない、って背後霊は思ってるみたい。
　　　晶：大きく違うのは私たちということか。
　　　結：…あ、あの…おねえちゃん…
マスター：特に結は大幅に違ってるような気がする。こっちじゃお姉さんキャラだったよね。
　　　晶：本当の結は甘えん坊の可愛いドジ妹。
　　　結：……あの……お姉ちゃん……その……ドジは……つけなくても……
　　　晶：コオルと同じ。言われたくなければ結果出す。
　　　結：…は、はい…
マスター：はうはうはう…あのお話は、絶対に僕の名前が出てこなくて悲しかったんだよ。
ルテジア：仕方ないじゃない。公式設定の名前が主人公だったんだから。
マスター：本編はちゃんとコオルって名前がオフィシャルであるから大丈夫。
ルテジア：オフィシャルじゃなくて、デフォルトでしょ。
マスター：まあ、そうなんだけど。
　まどか：本編での処理は結構上手に出来てましたよね。
マスター：そうだね。まどかがキミって呼んだり、アスレイがあなただったり。
　　師匠：なにのんびりしてんだいバカ弟子、そろそろこっちに帰ってきな。
マスター：…とほほ…師匠にはバカ弟子って呼ばれるようになっちゃったよ。
アスレイ：きっと、期待の裏返しですわ。
マスター：え？
アスレイ：あ、その、早く帰ってきて欲しいのですわ。話が前にすすみませんの。
マスター：あ、ごめんよアスレイ。じゃあ、休憩はもうこれくらいでいい？
　　　晶：ええ、いいわよ。
　　　結：あらあら、姉さん、気合いが入ってるわね。
　　マキ：ふふ、ちょっとだけ、昔風にかしらね。
　　卯月：あーもう、いいから早く行こうよ。
　まどか：マスター、では、もうひとがんばりしましょう。

 

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さて、休憩終わり、さあ大掃除を終わらせるぞ

　コオル：晶、魔法の道具の鑑定を手伝ってよ。
　　　晶：わかった。
　コオル：まどかは、高いところのほこりを払って。
　まどか：ええ、いいわよ。
　コオル：結と卯月とマキは、順番に魔法の道具を持ってきて。
　　師匠：戻す場所はわたしとアスレイが指示するから、その通りにね。
　　卯月：了解。
　　マキ：おまかせあれ〜
　　　結：あ、…はい……その……わかり…ました……
ルテジア：結ちゃん、そんな緊張しない。わたしも手伝ってあげるから。
　　　結：あ、はい……その……ありがとう…ござい…ます……

 

　さすがに８人がかりならあっという間に片がつく。

 

　　師匠：これで、わたしの研究室は終わりだね。
　コオル：やーつかれたぁ。師匠ぉ、これだけがんばったんだからなにかおごってくれるんでしょ。
　　師匠：甘えるんじゃないよ。まだ全部終わった訳じゃないんだからね。
　コオル：終わった訳じゃないって…まだ何か続きがあるんですか。
　まどか：あの、まだコオルには秘密にしておくんですか。
　　師匠：なんだ、バカ弟子には誰も何も言ってなかったのかい。
　　卯月：ま、言うタイミングがなくってさ。
ルテジア：あたしが、黙っておくように頼んだんだけどね。
　　マキ：帰ったら〜コオルちゃん〜びっくりしますよ〜。
　　　晶：そんな観察力があるのか。
　　　結：……お姉ちゃん……さすがに……あれは……見たら…わかる…と…思い……ます……
アスレイ：一体何をしたんですの。
　　師匠：まあ、それは行けばわかる。

 

　なんだか、僕だけ蚊帳の外に置かれてるような気がする。
まあいいや、帰ればって、あれ？何で師匠やアスレイがついてくるんだろう。
それに、みんないろんな荷物を持っているけど、一体なにを持ってるのかな。

 

　　師匠：つけばわかるよ。
　コオル：師匠、師匠の分ぐらい持とうか？
　　師匠：何か欲しいといったのは、おまえだろ。
　コオル：じゃあ、アスレイ、持ってあげようか。
アスレイ：余計なお世話ですわ。
　コオル：そんな言い方しなくても…
　レッジ：よう先輩。ちょっと頼みがあるんだけどさ。
　コオル：なんだレッジか、なに？頼みって。
　レッジ：ちょっと今月もピンチでさぁ
　コオル：また飯をおごれっていうの？今月は僕だって厳しいんだよ。
　　師匠：レッジ、またつまらないものを買ったのか。
　レッジ：つまらないものじゃないよ。ほらこれみてよこれ。
　　師匠：マジックソードか。…雷の魔力が封じてある、一万ちょっとってとこか。
　レッジ：さっすがビルギエッタ先生、一目で値段まで見抜くなんて。

　コオル：おまえ、そんな一杯魔法剣揃えてどうするんだよ。
　レッジ：わからないかなあ先輩。この刀身の美しさがさあ。ほれぼれするぜ。
　　師匠：道具に凝るのは勝手だが、道具に使われないようにな。
　レッジ：わかってますよ先生。ところで先輩…ちょっと夕飯をおごってくれないかな。
　　　晶：心配するな。余裕をみて作ってある。
　　　結：あ、はい…そうですね…人数が多い方が……楽しい……ですから……
　　マキ：あんまり多すぎるのも、考え物です〜
　コオル：まあ、僕の家も、そんな大きすぎるってほどのこともないし。
アスレイ：人数が増えると、挨拶もそれだけ面倒になりますわ。
　コオル：挨拶って？
アスレイ：つけば、わかりますわ。

 

　…まあ、いいか。
とりあえず僕の家に着いた。

 

　コオル：それで、玄関にあるこれ、一体何？
　まどか：…ええと、こっちの世界には竹がないんですか？
　　マキ：そういえば、見たことないですね〜。
　　卯月：植物も、ボク達の世界とは、ちょっとずつ違うよね。
　　　晶：食材がまず違う。食材が違うなら、植物が違うの当然。
　　　結：…あ…あの……まず……これが何か……
　　マキ：そうですね〜。コオルさん。これは、門松っていうんですよ〜。
　コオル：門松？
　　師匠：おまえのつれてる召喚獣の世界では、新年には玄関に飾るものらしいな。
　コオル：新年って、まだ新しい年が始まるには早いですよ。
　　マキ：うふふ〜私たちの世界では〜新年が来るんですよ〜。
　まどか：そういうこと。
　　卯月：そして、新年を迎える前には、大掃除をしないとね。
　コオル：あ、それで僕に師匠の研究室の大掃除をやららせたんだ。
　　師匠：やっと飲み込めたかバカ弟子。
　コオル：わからないのが普通ですよ。
アスレイ：普段から掃除をしておかないからですわ。
　　師匠：耳が痛い話だね。
アスレイ：いえ、べつにビルギエッタ先生のことを言ったつもりはありませんわ。
　レッジ：なんでもいいから食事にしようぜ。
　コオル：なんでもいいからって僕に言われても困るよ。
　　　晶：ちゃんと用意してある。心配するな。
　レッジ：楽しみにしてるぜ。

 

　さてと、家の中はさすがにいつもと同じか。

 

　まどか：合い鍵を持ってる訳じゃないですから。
ルテジア：あたしは持ってるんだけど、勝手に開けちゃわるいでしょ。
　コオル：そりゃそうですよ。
アスレイ：合い鍵を持っていることには疑問を持たないんですのね。
　コオル：そりゃ、ルテジアお姉さまには、お世話になってるから。
ルテジア：どうしたのその目は。
　コオル：レッジに何か食べさせてあげて欲しいな〜って。
　　　晶：コオル、私が大丈夫だと言った。
　　　結：…はい……その……おねえちゃんが……ちゃんと……皆さんの……分を……
　　　　　……用意……して……ありますから……心配……いらない……です……
　　卯月：だけど、まだ新年は来てないから、新年が来るまでとっておこうよ。
　まどか：そうだね。
　　マキ：では〜ちょっと早いですけど〜おそばにしましょう〜。
　　　晶：今からそばを打つのか。時間がない。
　　マキ：うふふ〜こんなこともあろうかと〜マキさんが準備してきました〜。
　　卯月：げ、どうみてもカップ麺じゃない。
　レッジ：カップ麺？なんだそれ。
　　師匠：これがおまえ達の言っていた携帯食料か。
アスレイ：お湯を注げば完成するそうですわね。
　まどか：ええ、インスタント食品っていうんですよ。
　　　晶：栄養のバランスも悪ければ味も悪い。お勧めではない。
　　マキ：ですけど〜忙しいときにはこれが一番です。
　まどか：マキは仕事柄こういうののお世話になることがおおいよね。
　　　晶：医者の不養生とはよく言ったもの。
　　　結：…え、えと……。
　　　晶：だが、そこに腹を空かせた人がいる。私も急には料理が用意できない。
　　卯月：すぐお湯を沸かすね。
　まどか：わたしも手伝おうか。
　　卯月：うん、手伝って。
　コオル：僕も手伝おうか？
　まどか：キミはみんなと待ってて。
　　卯月：そうそう。ボクらがちからをあわせれば、すぐに湧くから。
　　師匠：風呂の湯でも沸騰寸前にまで一瞬で湧かせたぐらいだからな。
　まどか：あら、まだ覚えてらしたんですか。
　　卯月：いい加減忘れてよ。ちょっと熱くなっただけなんだから。
　　師匠：まったく、このご主人様にしてこの召喚獣ありだね。
　コオル：とほほ…結局僕のせいになるのか。
アスレイ：当たり前ですわ。自分で召喚したものの責任は、自分でとるものですわ。
　コオル：わかってるよ。
アスレイ：はぁ…わかっているなら、ちゃんとした精霊も、呼び出せるようになって欲しいですわね。
　　師匠：卒業試験では、あの５人を呼び出しても点にはならないからな。
　コオル：わかってるよ。
　レッジ：ちっこい先輩。
　コオル：ちっこいだけ余計だよ。
　レッジ：本当に責任とれるの？いきなり５人だぜ。
　コオル：それどういう意味だよ。
　　師匠：わからないようなら、責任がとれるかどうか怪しいな。
アスレイ：そうですわね。
　コオル：？？？
　　卯月：できたよ〜。
　まどか：さあ、さっそく準備しましょう。
　　マキ：もうおねえさんが準備はしておきました〜。
　まどか：なら、あとはお湯を注いで３分間待つのだぞ。
　　　晶：後で私がちゃんとしたそばを作ってやる。
　　マキ：楽しみにしてるわね〜。
　　卯月：もうそろそろいいかなぁ。
　まどか：あ、卯月、まだ３分経ってないよ。
　　卯月：３分も待ってたらのびちゃうって。うん、ちょっとまだ煮えてないけどかき混ぜて…
　　　　　…と、いただきまーす。
　レッジ：なあ、もう食えるのか？
　　卯月：大丈夫、もう出来てるよ。
　レッジ：よし、じゃあ俺も…って、これどうやって使うんだ？
　　マキ：あらあら〜そういえば、こちらの世界には箸なんてなかったですね〜。
　コオル：フォークで食べればいいよ。はい、これ。
　レッジ：サンキュー先輩。
　まどか：三分、経ったみたい。
　　師匠：どうしてわかったんだい？
　まどか：携帯電話のタイマーを使ったんです。
　　師匠：へえ、なかなか便利なものなんだな。
　まどか：ええ、ただ通話するだけじゃなくて、スケジューラーにブラウザにカメラ機能もあるんですよ。
アスレイ：電気がなければただのゴミですわ。
　　師匠：そうだな。便利なものには相応の代償があるものだ。
　　　晶：簡単に作れる代わりに、味気ないインスタント食品のように。
　　マキ：あらあら、晶ちゃんはこだわってるのね〜。
　　　結：…あ、あの……お姉ちゃん……
　　　晶：私は今おなかいっぱい。これはあそこの欠食児に。
　レッジ：本当にもらっていいのか？悪いな。
　　　晶：気にしなくていい。
　コオル：晶はそういうけど、これも決して悪くはないよ。
　　師匠：軍用の保存食に比べればずいぶんとましだ。あれは人間の食べ物ではない。
　　卯月：ビルギエッタさんは、軍の食事についても知ってるんですか？
　　師匠：一応はな。
　　　晶：そろそろ、新年、来る。そば打ちしてくる。
　　　結：あ、はい…では、私も…手伝います……
　　　晶：おまえはいい。すこし、休んでいろ。

 

そういうと、晶は厨房へと消えていった。
そば打ちをするって、一体どうするんだ？

 

　　マキ：ちゃんとそば粉なんかも買ってきてましたよ〜。
　まどか：出汁も水筒に詰めて持ってきてますから、すぐに出来るはずです。
　　卯月：へえ、できあいの出汁は使わないんだ。すごいなあ。
　　　結：……え…ええ……お姉ちゃんは……人一倍……料理には…こだわりが…あります…から…
　　卯月：あ、そうだ、面白いソフト入れてきたんだよ。
　まどか：面白いソフト？
　　卯月：うん、大晦日にふさわしいアラーム音。
　まどか：なにかな？
　　卯月：時間になればちゃんと響くよ。

 

　そんなこんなで、みんなで雑談をしているうちに、晶がそばを持ってくる。

 

　　　晶：出来た。これが本物のそば。
　コオル：へえ、これが本物なのか。…って言われても、僕には区別がつかないや。
アスレイ：流石に香りからして違いますわ。
　　師匠：へえ、こういう器に盛るのが正しいのかい。こちらでは初めて見る料理だね。
　　　晶：盛りそばにせずに、あえてかけそばにした。
　レッジ：ところで、これもフォークで食っていいのか？
　　　晶：箸の使い方を覚えろ。と言いたいが、すぐには無理だろう。
　コオル：アスレイ、無理して箸を使わなくてもいいのに。
アスレイ：何事もやってみなければ出来るようにはならないものですわ。
　レッジ：アスレイはチャレンジャーなんだな。
　　師匠：あたしはアスレイに賛成だね。ほら、バカ弟子、レッジ、おまえたちも
　　　　　箸を持ってみるんだね。
　コオル：師匠、なんで師匠はあんな器用に使えるんですか。
　　師匠：ちょっと、おまえの召喚獣に手伝ってもらってるときに、教えてもらったんだよ。
　コオル：ずるいよ師匠。先に練習していたんじゃないか。
　　師匠：これに関しては、あたしもバカ弟子も条件が同じだろう。文句言うんじゃないよ。
　レッジ：これって、何か意味あんのかな。
　コオル：僕に聞かれたってわからないよ。
アスレイ：ビルギエッタ先生から、指先が器用になるとは聞きましたわ。
　　師匠：字を書く時にペンを持つだろう？基本はそれと同じだからね。
　レッジ：あ、それでなんとなくわかった…こうかな？
　　マキ：あら〜おしいですわね〜ちょっと違います〜
　　卯月：アスレイも苦戦してるみたいだね。ちょっと持ち方が違うかな。
アスレイ：大きなお世話ですわ。…やって見せてくださったら、その通りにいたします。
　　卯月：じゃ、遠慮無く。
　まどか：キミも、ほら、そんな拳で握って使う物じゃないんだから。
　コオル：え、ちょっとまどかってば。
　　　晶：みんな箸の持ち方にこだわりすぎ、またのびる。
　　　結：あ、あの……でも……おそばは……お箸で食べる方が……きっと…おいしいですよ……

 

　悪戦苦闘しながら、僕らが箸でおそばを食べていると、卯月の携帯が鳴り始めた。

 

♪ごーん♪

 

　コオル：卯月、これって？
　　卯月：えへへ、面白いでしょ。
　まどか：除夜の鐘のタイマー音なんだ。
　　卯月：そうだよ。
　コオル：除夜の鐘って？
　　マキ：煩悩の数の１０８回鐘をついて、煩悩を払うんですよ〜。
　レッジ：ちっちゃい先輩じゃ、１０８回じゃ足りそうにないな。
　コオル：レッジ、どういう意味だよ。
　レッジ：まあ、言葉通りの意味だけど。
　コオル：僕で１０８じゃ足りないんなら、クリスくんなんてどうするんだよ。
　レッジ：百万回ぐらい？
　　師匠：…まだ、新年じゃないのかい？
　　卯月：えっとね、１０７回なるまでが今年の内で、最後の１回は、新年になってから鳴らすんだって。
　　師匠：なら、もっと先だね。
　　　晶：まだ、そば残ってる。残すの良くない。
　　師匠：そうだな。食べ物は粗末にするものじゃない。バカ弟子、レッジ、二人ともがんばれよ。
　コオル：師匠、アスレイはいいの？
　レッジ：あれ、アスレイはもう食べ終わってる。
アスレイ：あなたたちが極端に不器用なだけですわ。
　コオル：ううう…なんでここまで言われるんだろう。
　　師匠：真剣さの差だね。アスレイは謙虚に卯月に教えてもらっていただろう。
　レッジ：わかったよ…マキさん、教えてくれ。
　まどか：キミは、どうするの？
　コオル：わかったよ。ちゃんと覚えるから。
　　マキ：ふふ。お姉さんうれしいな。
ルテジア：ひさしぶりかな、これを使うのも。
　コオル：え？ルテジア、何か言った？

ルテジア：いいえ、べつに。…と、ほら、急がないと…

 

急がないと何が起きるかは、すぐにわかった。

 

　まどか：…あけまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね。みなさん。
　　卯月：明けましておめでとー。
　　マキ：あけおめ〜。
　　　晶：明けましておめでとう。
　　　結：…あ、あの……明けまして……おめでとう……ございます……
　　師匠：あけましておめでとう。…ほら、おまえ達も挨拶しな。
アスレイ：あけましておめでとうございます。ですわ。
　レッジ：ありがとな。
　コオル：いや、それ違うから。
ルテジア：明けましておめでとうございます。…みんな、今年もよろしくね。
　コオル：こちらこそ、よろしくお願いします。
　　師匠：いや、だから、あけましておめでとうっていうのは…
　コオル：決まり切った挨拶なんでしょ、師匠。
　　師匠：わかってたのかい。
　コオル：一応はみんなから聞いてたから。
　　師匠：…師匠を担ぐとはいい度胸だね。
　コオル：え、べ、べつに担いだつもりはないですよ。

 

　こうして、僕たちの、〜いや、僕たちの世界での新年じゃないけど〜新年が始まった。

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