「なんだか、留学って言っても、学校と体育館の往復のような気がしてきたの」
「気がしてきたって言うか、その通りだよね」
「インターミッドで勝ち続けてるからだよ。でもでもでも、だんだん強い人と当たるってわくわくしない？」
「自分の実力が試せる、と言う意味ではいい事だと思うの。
　でも、本当にこれでミッドチルダとの文化交流をしてるかどうかは疑問なの」
「そうかもしれないね。
　でも、第97管理外世界はそれなりに認知されてきてるよ」
「どういうこと？」
「格闘技って、ミッドチルダじゃ一番人気のスポーツだって言ったよね」
「そうなの」
「一番人気のスポーツの中でも、アンダー20で最大のイベントはインターミッドだからね。
　インターミッドの予選とはいえ、激戦区の第1管理世界でこれだけの成績を収める異世界人っていうだけで
　注目度は全然違ってくるよ」
「とはいっても、実感が湧かないよね」
「あはは、それは仕方ないって、私も実感湧かないし。
　けど、ニュースじゃ触れられるようになってきてるんだよ」
「んじゃ、もっと活躍しないと行けないの」
「そうそう、その意気。……で、次は誰と当たるんだったかな」
「私はシード選手のエリスさんとなの」
「エリス・タミスン選手だね。バインドが得意な人だよ」
「私は師弟対決になるのかな。ハリー師匠とやるんだ」
「そうなんだ、私は友達とかな。ミウラちゃんと当たることになったよ」
「ヴィヴィオはミウラとあたるんだ、それで、勝算は？」
「やってみないと分からないよ。それはみんなそうなんじゃないかな」
「確かに、そうなの」

こうして、一週間はあっという間に過ぎていくの。

「さて、私の試合が最初か、みんな応援してね」
「頑張ってね、泪ちゃん」
「泪、実力以上を出せよ」
「以上は無理だと思うけど、実力出し切ってね」
「Take it easyだよ、泪」
「うん、気楽に頑張ってくるよ」

そういうわけで、　試合開始なの。

「まさか、おまえがここまで来れるとはな、ずいぶん成長したもんだ」
「あれからさらに磨きを掛けたよ。それをお見せするよ」
「大きく出たな、まあ、あたしも油断無しでやるからよ」

『Ready……GO!』

開始と同時にハリー選手は砲撃を仕掛けるの。
泪はといえば、それをかわすの。
泪の考えてることは、私にも分かるの。
私にも分かるということは、ハリー選手も分かってるはずなの。

「チャージからのジーザス・ライトニングか。
　けど、チャージ終了前に決着つけさせてもらうぜ」
「私にはこれしかないから。だけど、どんな砲撃も当たらなければ意味がないっていうのは師匠から習ったよ」
「その意気や良し、ま、あたしのはチャージ時間が長すぎて試合じゃ使えないからな。
　でも、まだ奥の手があるんだぜ」

そう言うと、ハリー選手は思いっきり間合いを詰めていくの。
砲撃戦を予想してた泪はちょっと意表を突かれたみたいなの。

「殴り合いで撃たれる前に決着つけさせてもらうぜ！」
「殴り合いなら望むところだよ。間合いに入ってくれれば好都合」

体格は変身魔法を使っても、まだハリー選手に分があるようなの。
だけど、殴り合いのケンカ殺法なら、泪だって負けてないの。

「いいパンチ出すじゃねえか」
「ケンカなら腕に覚えがあるよ」
「いい返事だ。でもこいつはどうかな」

ハリー選手の拳に炎が乗るの。
これで、ハリー選手の一撃の威力が増したの。
泪の方は、チャージ中で魔力を攻撃に十分振り向けられないの。

「チャージ完了まで3分、それはきっちり覚えてる。
　だから、あたしは3分で決着つけてやる」
「うん、それはお互い確認したよね。
　当たれば一撃必殺の威力があるけど、3分間どうやってしのぐかの練習もしたよ。
　そのときの練習通りにやるだけ」
「練習通りじゃ無理だぜ」

ハリー選手の攻撃は、短く、それでいて威力はたっぷりなの。
泪はよけたり受けたりだけど、いいのも時々受けてるみたいなの。

「後1分でチャージ完了だけど、それまでもちそうにないの」
「チャージを捨てて攻撃に回ったらどうかな」
「リオ、多分それだと手遅れなの」
「ずるずるLPを削られてるな、これじゃすぐにサンドバッグモードだ」
「泪ちゃん、頑張って」
「これで、終わりだ」
「うん、これで終わり、『ジーザス・ライトニング』」

え？　泪がチャージ完了するまでにあと30秒はかかるはずなの。

「チャージ途中で撃ったの？」
「泪ちゃん、でも、途中で撃ったら後が続かない……」
「……けど、ハリー選手、ダウンしてるぜ」
「え？」
『……8……9……10』

「ふう……チャージ量を増やす練習しててよかった〜」
「チャージ時間そのものを縮めたの？　それも30秒もなの？」
「あはは〜これが私の切り札。もし3分間でチャージする予定にしてたら持たなかったよ」
「チャージ時間3分ってのが頭にあったのがあたしの敗因か。よくやったな」
「ごめんね、だましたみたいで」
「いや、いいよ。チャージ時間を減らすってのは作戦の基本だ。
　威力を落とさずにチャージ時間を縮めるか。
　じゃあ、あたしもあれのチャージ時間を縮める練習でもしようかな」
「あれって？」
「秘密だ、おまえのそれが秘密だったようにな」
「うん、師匠、ありがとうございました」
「いや、こちらこそ」

こうして、泪はさらに上へと進んだの。
泪にはこういう切り札があったけど、私にはなんにもないの。
これで、シード選手に勝てるの？

 

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