負けたことを引きずっていても仕方ないの。
まずは、ヴィヴィオの所へ行って、御祝いを言うの。

「ヴィヴィオ、これで準決勝進出だね」
「ありがとう霧子ちゃん。なんとか勝てた〜」
「こちらからは有効打が与えられなかった気がするの」
「でも、セイクリッド・ディフェンスは、打撃は受けないけど、魔力の消耗は激しいからね。
　あのままずっと戦ってたらきつかったかも」
「あとは準決勝、決勝と進むだけだね」
「そううまくいけばいいんだけど」
「こんにちは、久しぶりヴィヴィオ。いい試合だったね」
「ありがとうルーテシアちゃん」
「あ、そうそう、初めまして、霧子さん。
　私はルーテシア、ルーテシア・アルピーノ。次の試合に……」
「ようお嬢、のんびり挨拶なんかしてていいのか？」
「ノーヴェ、やることはやってるから大丈夫。
　試合開始までもう少し時間があるし」
「ルーテシアさんはどんな戦い方をするの？」
「それは見てのお楽しみ。
　ていうか、過去対戦のビデオは見てないの？」
「ずっと目の前の相手で手一杯だったの」
「そうなんだ。ノーヴェんとこの子って、みんながベスト8入りしたんだね」
「まあ、運も実力のうちだからな。けど、生半可な鍛え方をしたつもりはないぜ」
「ノーヴェの教え子とも当たりたかったけど、それはまず、目の前の相手を倒してからの話になるかな」
「強敵だな」
「まあね。でも、対策はしてきたから」
「そろそろ時間だぞ」
「あ、本当だ。じゃ行ってくるね」

そう言うと、ルーテシアさんはリングへと向かったの。

「よし、ひとまず観客席へ行こう。お嬢とエレミアの試合はもうすぐだ」
「はい」

そういうわけで、私達は観客席から、ルーテシアさんと、
不敗の女王、ジークリンデ・エレミアさんとの試合を見ることになるの。

「ルーテシアさんって、どんな戦い方をするんですか」
「そういえば、泪と霧子には、まだ紹介してなかったな。
　ルーテシア・アルピーノ。召喚術はこの大会じゃ禁止だから使わないが
　召喚術をのぞいても、魔法戦のエキスパートだな。
　射撃砲撃防御に支援となんでもござれだ」
「相手のエレミアさんはどうなの？」
「あっちは総合格闘の化け物だな。
　まあ、見れば分かる」
「始まるね」

第二試合開始のゴングが鳴るの。
ルーテシアさんは別に何一つ構えること無く、エレミアさんを待ち受けるの。

「出だしは軽くいこか」

先に動いたのはエレミアさんなの。
無数の魔法弾を用意して、包み込むように魔法弾を発射するの。

「Ｏ．Ｋ．はじめよっか」

ルーテシアさんは、魔法弾を軽くリフレクトシールドで跳ね返すの。
跳ね返された魔法弾は、そのまま全く逆向きの方向をとって
エレミアさんの方へ向かって行くの。

「定石やな」

全く意外じゃない表情を見せるエレミアさんは、無数の魔法弾を手で握って投げ返すの。
でも、魔法弾を投げ返すって……

「古代ベルカの技術の一つです。私にもできますよ」
「私は聞いたことないの」

学校の勉強では、魔法弾を投げ返すなんて聞いたこともないの。
でも、現実にエレミアさんがやってのけたの。
それに、アインハルトさんんもできるって言ってるの。

その魔法弾をもう一度ルーテシアさんは跳ね返すの。
エレミアさんの次の一手は……

早い！

エレミアさんは跳ね返ってきた魔法弾をかわして
一気にルーテシアさんとの間合いを詰めるの。
あれだけの魔法弾を、はじくことも無くかわしきるのは
ルーテシアさんんいも想定外だったみたいなの。

ルーテシアさんは宙に浮いて間合いを開くの。
そこから魔法弾を打ち下ろすの。
でも、エレミアさんはその打ち下ろした魔法弾をこんどははじき返してルーテシアさんに向けるの。

ルーテシアさんはそれを反射させて防御。
けど、反射させるのに意識を使ったために、エレミアさんの飛び込みが見えなくなってたの。

「すごい……」

飛び上がったエレミアさんは、そのままルーテシアさんの足をつかんで
飛行魔法を使ってるはずのルーテシアさんをリングにたたきつけるの。
そして、反動を使って間合いを開くの。

「いたた……」
「これで終わりやないやろ」
「んー一気に近づいてくれたらなんかあったんだけどね……」

そうルーテシアさんはぼやくと、ゆっくりと歩いてエレミアさんの方に近づいていくの。

「そっか、じゃあ、一気に近づいてみよか」

エレミアさんは、ぱっと距離を詰めるの。
なんと言ってもエレミアさんは動きが速いの。
この早さは、早さが取り柄の私を超えてる気がするの。
ルーテシアさんの方は、この早さでもちゃんと見えてるらしくて
至近距離から魔法弾を放つの。

でも、それがエレミアさんの計算のうちだったみたくて
魔法弾をさっとかわすの。
そして、手を取っての足払い。
そこから流れるように寝技に持ち込んでのチョークスリーパー。

ルーテシアさんの放った魔法弾が戻ってくるけど、それもエレミアさんの想定通りみたくて
戻ってくる向きにルーテシアさんが盾になるような位置へと組み直す。

魔法弾はルーテシアさんに直撃。
どうやら、ルーテシアさんは魔法弾の誘導をする力も残ってなかったみたいなの。

魔法弾の誘導失敗でルーテシアさんがタップ。
これでエレミアさんの勝利が確定したの。

はやくて、技が多彩で、力も強い。
これが不敗の女王の実力なの。

 

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