雲野霧子の留学
【第二十八章】
〜全国大会への最後の椅子〜


こうして、また日曜日が来るの。
今日は、フォビアさんとコロナの三位決定戦と、ジークさんとヴィヴィオの決勝戦があるの。
このミッドチルダ大会で、三位までに入れば、全国大会への出場権が得られるの。
つまり、この三位決定戦は、全国大会への最後の椅子を掛けた、ある意味決勝戦よりシビアな戦いなの。

「コロナ、ヴィヴィオから戦い方の基礎は学んだな」
「はい」
「あとはおまえ次第だ。相手は一度ヴィヴィオに負けてる。 
 その分修正はしてるだろう。
 気を抜くな、でも、緊張しすぎるな」
「はい」
「ま、考えても始まらない。精神攻撃対策はできてるから
 あとは相手の物理戦闘能力だけだ、やるだけのことはやった、実力を出そう」
「はい、ノーヴェ先生」

そういうわけで、私達は応援席へと移動、コロナとノーヴェは競技場へと向かうの。
観客席は大入り満員、立ち見も一杯の盛り上がりなの。

「すごいの、とても地区予選の三位決定戦とは思えないの」
「霧子、やっぱりこの世界の格闘って、大人気なんだね」
「あはは、二人はこの雰囲気は初めてだよね」
「そうなの」
「私は去年、なのはママと一緒に来たことあるよ。
 去年も盛り上がってたけど、今年はそれ以上かな」
「何があるんでしょう」
「やっぱり、不敗の女王再臨が大きいんじゃないかな」
「そういうヴィヴィオが決勝戦やるんだよ」
「あ、そういえばそうだったね」
「忘れてたの?」
「うーん、あんまり実感がない」
「試合が始まりますよ」

フォビアさんは、やっぱりセコンド抜きでやるみたいなの。
コロナはノーヴェと一緒に登場。二人ともリングに上がって、握手するの。
そして、試合の開始を告げるゴング。

「あれ? コロナってゴライアス作らないの?」
「AMF対策はできてるだろうから、AMFは使わないってコロナは言ってたけど……」

フォビアさんは、使い魔に爆弾を投げせて攻撃するの。
コロナはそれをフットワーク軽くかわすの。
そして、使い魔を殴り飛ばしていくの。
その姿を見て、フォビアさんはちょっと首をかしげるの。

「どうしたんでしょう。フォビアさんには意外な展開みたいですけど」
「おそらくは、高重力場を作っているのでしょう。
 それが通用してないことが不思議なのでしょうね」
「どうして通用しないんですか」
「ネクロノフィストだよ」
「ヴィヴィオさん、それって?」
「ゴライアスを動かすハイパワーで自分の体を動かしてるんだよ。
 だから、高重力場でも自分の体を自在に動かせるんだよ」

コロナは、使い魔を殴りながらフォビアさんに近づいていくの。
フォビアさんは、殴り合いは苦手なようで、コロナさんと間合いを開こうと飛ぶの。
コロナがニコッと笑うの。

コロナが素早くフォビアさんの真下へ走るの。
フォビアさんが落下してくるの。
コロナはそれをかわしてフォビアさんへパンチを入れるの。
フォビアさんは、高重力場を消したみたいなの。
それから再び宙へ舞うの。

「意外、高重力場を逆用された」
「対策は練ってきたよ」
「でも、これはまだ見せてない技……」

そういうと、フォビアさんは小瓶を取り出すの。

「コロナ・ティミル……封印!」

コロナがきょとんとしてる間に、フォビアさんは詠唱を完成させ、小瓶にコロナを封じてしまったの。

「え? なにあれ、反則じゃない?」
「レフリーもきょとんとしてるみたいなの」

フォビアさんは、小瓶をそのまま場外に置くの。

「カウントが始まったね」
「コロナ、出られるかな、20秒で」
「あれはまったくの想定外だったな〜、コロナが機転を利かせてなにかできればいいんだけど」

コロナは魔法の詠唱を始めたみたいなの。

「無理、あの瓶は魔力を封じる」

がちゃん。

「え?」

コロナは瓶を中からたたき割ったの。
そして、急いでリングに戻ろうとするの。

でも、リングに戻りきる前に、無情にも20カウントが宣告されるの。

「勝者、フォビア=クロゼルク」

フォビアさんの勝利なの。

「でも、瓶を割るのは想定外だった」
「最初は外からゴライアスを召喚しようとしたんです。それが敗因ですね」
「最初から瓶を割るのに専念してると思った。あの瓶は外部への魔力を遮断するし、内部でも魔力は薄かったはず」
「力を一点に集中して、全力で殴り飛ばしました……いたたたた……」
「無理のしすぎ、すぐ治療を受けた方がいい」
「はい、そうします」

こうして、全国大会への最後の椅子が埋まったの。
コロナもいいところまで行ってた気はするの。
でも、フォビアさんの壁は厚かったの。

 
 

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