War to END WARS
【第四章】
〜Iron Bottom Sound〜
ここは、とある研究所
『先生』と、Ｐ−３達が、たった今入った情報の衝撃から
立ち直ったばかりだ
「どうやら、敵を見くびりすぎていたようですね」
「その通りだな、それにしても奴が生きていたとは」
「済んだことより、これからの対策が問題ですね」
「その通りだＰ−４」
「・・・・ちょっと行って、オリジナルを取り返してくればいいじゃない」
「そうと決まったらさっそく出発！」
「Ｐ−５、まだなにも決まってないわよ」
「え〜、でもほかに方法無いでしょ、Ｐ−６」
「Ｐ−３、何か心配事でも？」
「え、ううん、何でもないよ、Ｐ−４」
「・・・・・・・・・・・・・・なんとか、指しきれるな・・・」
「先生、やるの？」
「いや、直接救出に向かうと、不測の事態が起きかねない
オリジナルのイデアを確保するのに早くても一月はかかるだろう・・・
E.N.Dを超える兵器を作るつもりなら、なおさらだ
だから・・・間接的アプローチでも十分に間に合うはずだ」
「間接的アプローチって、なに？」
「直接救出に向かうのではなく、間接的に救出を支援するってことよ、Ｐ−５」
「まだるっこしいなぁ、ぱっと行ってぱっとつれてくればそれで終わりじゃない」
「そういうなＰ−７、おまえのお楽しみもちゃんとあるんだから」
「なら私は賛成」
「現金だな
さて、Ｐ−３、悪いがひとまず空木君達と合流してくれ
まだ連中はおまえの存在に気づいてないだろう・・・
なら、おまえが彼らと合流すれば、疑心暗鬼に陥ってくれる可能性がある
Ｐ−５、Ｐ−６、二人はDICEの動きを監視してくれ
Ｐ−４はＰ−８完成を今まで通りに手伝ってくれ
Ｐ−７は・・・・」
『先生』がここで底意地の悪い笑顔を見せた
「・・・二人きりの時に話をしよう」
「Ｐ−３、がんばって、十夜君とられたらだめよ」
「え？な、なによ急に・・・」
Ｐ−６の言葉は確かに唐突だったろう
「そうだそうだ、瞳に負けるな！」
Ｐ−５の言葉によって意味は通じたみたいであるが
一瞬の沈黙、それから場は笑い声に包まれる
その笑い声の中で、Ｐ−６のつぶやきは、Ｐ−３に聞き取れたのだろうか？
・・・・・・そういう意味じゃないんだけどね・・・・・
「信じられないわね」
Ｐ−３についての説明を聞いたとき、
空木の第一声はそれだった
空木と誠志郎が藍仙高校へと帰ってきたとき
Ｐ−３と十夜は二人で名城の看病に当たっていたのだ
「『観測された事実のみが事実』なのに」
「何だそりゃ」
「先生の口癖なの」
「・・・・確かに、オーギュメント開発に携わった研究者なら
そう考えないといけないんだけど・・
それでも、信じられないわ、あの出来損ないが・・・」
空木の感想は無理もない
ディゾナントの役立たずぶりははっきりと覚えている
自分自身開発に携わっただけに使い物にならない・・・少なくとも
オーギュメントとは比較にならないことはわかっている
「兵器って言うのは量産できて初めて兵器だから
その意味だと実用的な兵器はディゾナントだけだって
先生は言っていたけどね」
「それより、どういうことなのかはじめからはなしてくれよ」
「うん、いいよ
・・・・なにから話せばいいのかな？」
「まずは、あんたの正体から頼むわ」
「そうだね・・・私は完成されたディゾナントでカスミのコピー、
プロトタイプナンバー３、略してＰ−３なの」
「それで・・・なんでまた俺達の前に姿を現したんだ？」
「だって、このままじゃみんなDICEにやられちゃうわよ
それに、先生もオリジナルをＪ．Ｂの手に渡したくないのは一緒だもの」
「要するにＪ．Ｂと先生とは敵対関係にあるって訳だな」
「うん、・・・・先生はオリジナルを巻き込むつもりはなかったの」
「・・・・・じゃあ、品川で襲ってきたディゾナントもＪ．Ｂが？」
「ううん、あれは先生の作ったディゾナント
あのときＳＣ空間を展開しておかなかったら、十夜君達
その場でやられてたから・・」
「ほんとかよ・・なんかいまいちしんじられねえんだよなぁ・・・
その、先生って奴も、あんたもよ」
「・・・・・・・・・・・信じられないのは仕方ないかもね
でも、うそは言ってないよ」
「まだ答えは聞いてないぜ」
「そうだね・・・先生がみんなに手を貸そうとしてるから」
「・・・・・手を貸す？」
「そう、オリジナルを取り戻すんでしょ
だったら、私が力を貸して上げる」
「？？？カスミに出来ることしか出来ないだろ」
「オリジナルはまだ覚醒してないから・・・・・・」
「覚醒？」
「うん、E.N.Dって、オリジナルをコアにして出来てたよね
私たちは自分で自分をコア・ブレインとして使って
カレイドフェノムを発動できるの
オリジナルはそれが出来ないから、遅れをとったんだね」
「・・・・どうやってカスミを助け出すつもりだ？」
「オリジナルの存在波を探知すれば場所はわかるはずだから・・・
あとはオーギュメントでそこを襲撃して救出する・・・」
「結局は力業か」
「ねえ、園宗寺さんは手を貸してくれないの？」
名城の疑問はもっともだ
「・・・・あえなかったんだよ
面会の予約のない人とはお会いできませんの一点張りでな」
「つらい立場だな・・」
「それで、これからどうするの？」
「・・・俺に言ってるのか？」
「先に言うと、俺はこいつを仲間に入れるのは反対だ」
「・・・私も、どっちかっていうとやめて欲しいかな
・・・・・・・カスミが２人もいちゃおかしいよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「空木さん、あんたの意見は？」
「・・・・・戦力としては確かに当てになるわ
私からいえるのはそれだけね」
「・・・Ｐ−３、ずっとサングラスを掛けているつもりか？
それだとすぐに偽物だとばれるぞ」
「それならしんぱいないよ」
そういうと、Ｐ−３はポケットからコンタクトレンズを取り出して装着した
２，３度瞬きする
「うん・・・これでいいかな？」
「目の色を変えるコンタクトレンズか・・」
「これをはめるとあんまり見えないんだけどね」
「目が悪くなるコンタクトレンズってわけか」
「そうよ、誠志郎くん」
「・・・・・なら問題ないな
手を貸してくれ、Ｐ−３」
「おい十夜、正気かよ・・・」
「じゃあ逆に聞くが、ほかに方法があるのか？」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「園宗寺さんや霧生君は頼れないの？」
「・・・まず期待できないわね
たぶん、DICEの本部から圧力がかかってるのよ」
「単純な戦闘力なら、私の方が二人合わせたより上のはずよ」
「大きく出たな」
「だって、本当のことだもの
それに、情報収集能力だって、存在波を認識できる私の方が
役に立つ場面もあるよ
それに・・・私がいても園宗寺さんの協力を得るじゃまにはならないでしょ」
「・・わかった、で、これからどうするんだ？」
「たぶん、カスミさんはDICEの研究所のどこかにとらえられているはずよ」
「だったら、また端末のある場所を襲撃して情報を手に入れればいいんだな」
「そう話は甘くないわ
前回はパスワードを壬生さんが覚えていてくれたから簡単につながったけど
今回は力業でパスワードを見破らないと無理だから・・」
「だから、存在波を捜索する方が早いのに・・・」
「おいおい、カスミが東京にいるとはかぎないだろ」
「・・・・・・・東京のどこかにいるのは確実だよ」
「何でわかる？」
「Ｊ．Ｂは最初に東京を破壊するつもりだから」
「だから、なんでそれがわかるんだ？」
「先生とＪ．Ｂはしばらく同じ研究をやっていたから
そこで話を聞いたんだって」
「どうにも、話がうますぎるよなぁ」
「ねえ、今からどうするの？」
「まずは、名城が回復するのを待つべきだ」
「・・・そうね、それが最初にくるべきね」
「あたしは平気だよ」
そういって、名城は起きあがるが・・・すぐに苦痛で顔をゆがめる
「まだ無理みたいだな」
「ＳＣ空間でまともに打撃を受けたらすぐには治らないよ・・」
「Ｐ−３、わかるのか？」
「しばらく先生の手伝いをしてたから」
「・・・・・なるほどね」
時計は夕食時を告げている
「じゃ、私が夕食を作って上げるね」
「Ｐ−３、作れるのか？」
「だって、私もカスミ・アインハルトだもの」
・・・・そう、私も、カスミ・アインハルトだから・・・
翌日、十夜達は何事もなかったような顔をして教室にいた
Ｐ−３が級友の疑惑を招くことも起こらない
名城が保健室で寝ている理由も急な貧血という説明で
皆納得したみたいである
「おい十夜、ちゃんと責任を取れよ」
などというセリフをぶつけてくる奴もいるが
最初にそれを口にしたのが誠志郎だというあたり
十夜の友人達がどういった人種かよくわかる
「しかし、理子ちゃんの授業が自習になったのはありがたいよな」
「誠志郎君、不謹慎だよ」
「・・・・おまえ、ほんとに同じセリフをいうんだな・・」
「普通はそういうと思うんだけど」
「ねえねえ、３人ともどうしたの？深刻そうな顔して」
「汐音さん、そんなに深刻な顔をしてるように見える？」
「見える見える、一時期十夜たちが学校さぼってた時と
同じような顔してる」
「・・・・・・気のせいだろ」
「そうかな？まあいいんだけどね
それより学園祭のコンサートには来てくれるんでしょ」
「お、もうそういう時期か？」
「学園祭はもう少し先だと思うんだけど・・」
「確かに学園祭は７月だけど、準備はいまからやらないと間に合わないから」
「うん、楽しみにしてるよ」
「それで、俺達に何か頼みでもあるのか？」
「え、なんでわかったの」
「顔に書いてある」
「あはは、学園祭はメンバーが全員学校の生徒っていう条件があるから
どうしても足りないメンバーが出て来ちゃったんだ」
「足りないって・・」
「そ、誰かドラムをやってくれると助かるんだけどさぁ」
「おいおい、そりゃ頼む先が違うんじゃないのか？」
「誰も誠志郎にやってくれって言ってないよ
ドラムの出来る奴を紹介してくれたらって思っただけ」
「お、それなら俺も探してやるよ」
「ホント？じゃ見つかったら声かけてよ
あたしは・・・放課後は屋上で練習してるから」
夕凪はそれだけ言うとさっさと立ち去る
「・・・・あいつはずっと自分の夢を追いかけてるんだな」
「ああ、俺達もかくありたいねぇ」
「・・・・・いいなぁ、自分の夢がある人は・・」
「？Ｐ・・・あ、カスミは将来の夢はなんなんだ？」
「・・・・えと、おり・・じゃなくって
わたしの夢は・・ううん、やっぱりいいよ」
「なんで？」
「そうだね、二人とも将来の夢を教えてくれたら教えて上げる」
「俺の夢はちゃんとあるぞ
高校を卒業したら４流大学に潜り込んで８年通って
恐怖のＯＢとして名を馳せる！」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「な、なんだおまえらその目は」
「いや、どうせなら３流大学ぐらい目指すべきだとおもってな」
「誠志郎君、それじゃ大学を卒業したらどうするのよ」
「ふ、恐怖のＯＢはいつまでも大学にとどまるのさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・やっぱり話すのやめる」
「な、なんでだよ」
「・・だって、誠志郎君ギャグではぐらかすんだもの
私はまじめに話をしてるのに」
「ひどいなぁ・・俺は本気でかくありたいと思ってるのに」
「・・・本気ならなお悪い」
「おいおい十夜、だったら言って見ろよ、おまえの夢って奴をさ」
「ああ、俺の夢か・・・」
そういって、十夜の言葉が止まった
「・・・夢か・・そういえば、考えたこともなかったな」
「そらみろ十夜、人のこといえないだろ」
「・・・・・みんな、汐音さんにはかなわないね」
「そうだな・・・・」
「で、なんでこんな話になったんだ？」
「ドラマーを捜してくれって夕凪に頼まれたからだろ？」
「で、探すのか？」
「探してあげようよ」
「ああ・・・でも、名城はいいのか？」
「空木さんがいるなら大丈夫よ」
「・・だから、なんでそう断言できるんだよ・・・」
「Ｊ．Ｂは目的を達したから動くはずがないし
DICEはまだ私の存在に気づいてるはずがない
たとえ気づいたところで動くまでにはまず最初に
情報収集をするはずよ
それなら、先に私が見つけることが出来るから」
「強気だねぇ・・」
「本当のことだもの」
「だったら、ドラマーもちゃっちゃと見つけてくれよ」
「そうね・・・ドラマーを見つけるのは簡単だけど
頼むのは誠志郎君達にまかせるね」
「ああ、そうするか」
というわけで、放課後
十夜達はさっそく学校を回ってドラマーを捜す
「おいカスミ、本当にドラマーがいるのかよ」
「う〜ん・・・素人なら何人か感じるんだけど
汐音さんに釣り合うドラマーっていないから・・」
「夕凪に釣り合うドラマーがいたらそっちのほうが怖いぞ・・」
その通りである
「・・・・ま、素人でもいいから声掛けてみようぜ」
「ああ」
１時間後
「・・・・なんで全員に振られるんだ？」
「みんな自分のバンドがあるとは思わなかったね
なら、とりあえず汐音さんに話をしに行った方がいいよ
汐音さんも自分で探しているだろうし・・」
「ああ、そうだな」
「おまえ、ずいぶん楽してるな、十夜・・・」
「どうしてだ？」
「セリフが少ない」
「・・・・なんなんだそれは・・・」
そして、屋上
夕凪と仲間達・・・キーボードとベース、ギターの３人はそろっている
ただ一人、ドラムがいない
「あ、みんなどうだった？」
「全然だめ、全員自分のバンド持っててそっちに出るってさ」
「そっか、やっぱり急造バンドに入ってくれるドラムっていないのかな」
「なあ、ほかのバンドと合同っていうわけにいかないのか？」
「ことわられちゃったんだよ、それで自前のバンドを作ってるわけ」
「困ったな・・・」
「・・・・だったら、誰に急造のドラムになってもらったらどうかな？」
「急造のドラムって、誰がやるんだよ」
「そうだね、十夜か誠志郎のどっちかにやってもらおうか」
「おい、なんでそうなる？」
「二人とも、がんばってね」
「・・・・・・ま、仕方ないな」
こうして、Ｐ−３の脳天気な応援を受けて二人はドラムに挑戦することになった
だが、さすがに夕凪のレベルにあわせるのは苦しい
・・・いや、正確に言おう
あれならメトロノームにドラムを叩かせた方が数段ましである
「・・・しょうがないか、ドラム無しだね」
「ああ、仕方がない」
「・・・・いや、まだ一人残ってるぜ」
「え？だれなの、誠志郎君」
「・・・・カスミ、おまえもやれ」
「え？わたしはいいよ」
「俺達だけやるんじゃ不公平だな」
「・・・そうだね、カスミもやらないとバランスとれないかな」
「う、うん・・・・じゃ、やってみる」
そういうと、カスミはドラムのそばに行って一つずつ
なでて回る
「なにやってるんだ？」
「・・・・あのね、声を聞いてるの」
「声を？」
「うん、この子達と心が通わないとなにも出来るはず無いから・・・」
「そろそろいいかい？」
「うん、いいよ」
One Two １，２，３，４
♪（おんぷ）♪・・・・・・・・・・・・
「へえ、案外うまいじゃない」
「案外っていうより、すぐにでもいけるんじゃないか？」
「人は見かけによらないねえ」
夕凪の仲間達はカスミの・・Ｐ−３の・・ドラマーとしての能力に
驚いたようだった
だが、カスミがいままで一度もドラムなどさわったことがないという
事実を知ったらどんな顔をするだろうか？
そう・・・・・これがＰ−３のもつ最大の能力だった
過程を無視していきなり結果を存在波の形で出すことが出来るのだ
もちろん、副作用はある
十夜達がＰ−３のそばに行けば、そこがＳＣ空間であることを
知ったであろう
ＳＣ空間の中での確率の波動・・・その波動の中から
Ｐ−３は望ましい結果のみを取り出しているのである
ということは、失敗という過程もＳＣ空間の中では発生している
そして、その失敗という過程もＰ−３は自分で実行しなければならない
・・・・Ｐ−３は３分で疲れ果ててしまった
「・・・も、もうだめ・・・」
「カスミ、大丈夫？」
「う、うん・・・・もっと上手に出来ると思ったんだけど・・」
「最初にあれだけ出来れば上出来じゃない」
「ううん、あれは最初にじゃないから・・」
「それにしても、カスミに意外な才能があったよな」
「・・・まったくだ、これでドラムは決まりだな」
「ちょ、ちょっとまってよ、私にはする事があるじゃない」
「・・・あ、」
「・・・・・そうだったな」
そう、十夜達も一瞬忘れてしまっていたのだ
カスミのオリジナルがＪ．Ｂに捕らえられているという事実を
「・・・・そっか、第二科学部も学園祭に出展するんだ」
「第二科学部？」
「ちょっと、自分の部の名前ぐらいちゃんとおぼえときなよ」
「・・そういえば、そういう名前だったような気もするな」
「まったく、毎日合宿で何かやってるんでしょ
新しい先生は妙な機械を持ち込んでいるし」
「・・・・・学園祭になったら見学に来てね」
「うん、手が空いたら見に行くよ」
「・・・ごめんね、何にも力になれなくて」
「いいよ、なにかしてくれただけでも嬉しかったから」
そういうと、十夜達は保健室に帰ろうとする
だが、屋上へと近づいてくる一団が目に入った
「・・・・十夜君、誠志郎君・・気をつけて、ディゾナントが近づいてくる」
Ｐ−３は小声で２人に注意を喚起する
「え？まだ何にもみえないぜ」
「いま階段を上ってきている最中
もうすぐ扉を開けるわ」
「Ｐ−３・・・戦えるか？」
「・・・・ごめんなさい、いまのドラムで力を使っちゃった
今はあんまり戦力になりそうにないの」
「な、なによあんた達！」
夕凪の声が今屋上に現れた一団へと向けられた
確かに、鉄パイプを持った、同じ顔、同じ服装の一団が
上がってくれば異様である
「・・・・さっきのＳＣ空間を検知されたのね」
「さっきのＳＣ空間って・・」
『ＳＣ空間を検知、オーギュメントを起動します』
議論している暇はなさそうだった
十夜達は否応なしにディゾナントとの戦いに巻き込まれる
「・・やっと、終わったな」
「ああ」
「・・・油断しないで、どうやら学校内全体のディゾナントが
丸ごと活性化したみたい」
「ってことは・・・」
「ああ、すぐに保健室へ！」
「ちょっと、一体今のは何だったの？」
夕凪と仲間達はＳＣ空間のショックから立ち直っていないようだった
「説明してる暇はない！」
だが、十夜達３人は夕凪達を置いて保健室へと走った
『ＳＣ空間を確認、オーギュメントを起動します』
「くそっ、またかよ・・」
『フレア・バースト』
だが、彼らの行く手を遮ろうとしたディゾナントは
Ｐ−３の強力なカレイドフェノムの前に一瞬で消滅していた
「なんだ今のは・・・」
「急がないと瞳さん達が危ない！」
「ああ、そうだ」
廊下を走るな！
という先生の制止も聞いているわけにはいかない
十夜達は心臓も裂けよとばかりに保健室へと駆け込んだ
「あんたたち、扉はもっと静かにあけなさいよ」
「り、理子ちゃん・・・ディゾナントは来なかったか？」
「ディゾナント？そんなもの見てないわよ」
「・・・・ディゾナントがいたの？」
「うん・・・存在自体は知っていたんだけど
襲ってくるとは思わなかったから・・」
「おいおいＰ−３・・・なんでそうなるんだよ」
「だって、あれは全部先生の作ったディゾナントだったから・・・」
「なんだって？」
「・・・・・先生はこの学校にディゾナントを伏せてるのよ
情報収集のために
オリジナルがさらわれたのがわかったのも、そのせいなの」
「なるほどねぇ・・・用意周到なんだな」
「うん、でもどうして先生が・・」
翌日、その答えはわかった
「十夜君、ディゾナントが来たよ」
「また先生の放ったディゾナントだろ？」
「ううん、今度は違うよ」
「ってことは・・・」
「まったく、あさっぱらからご苦労なこって」
７時前に襲ってくるのだからたまらない
異様な集団の来襲に早出の生徒達は引くが
そんなことであきらめるディゾナントなどありようがない
「・・・・・一体どれだけいるんだ？こりゃ・・・」
「でも、逃げるわけにはいかねえよなぁ」
「そうだね」
「名城、もういいのか？」
「うん、もう大丈夫」
名城はそういうと、ひょいと起きあがってジーザス・シュラウドを装備する
今度はその言葉に嘘はないらしい
「よし、返り討ちにしてやろうぜ」
「あんたたち、油断は・・・」
「分かってるって」
「ほんとかなぁ？」
「私は手伝わない方がいい？ゲームバランス壊れちゃうよ」
「おいおい、そんなこと言わずにてつだってくれよ」
この日、十夜達は一日中戦い続けさせられた
だが、その戦いには十分な意味があった
DICEはこの一戦で手持ちのディゾナントを
すべて使い果たしてしまったのである
一方、DICEもまたこの一戦には意味があると判断していたようだ
十夜達の戦力を正確に把握したのだと信じていたのだから
もはや、十夜達はお釈迦様の手のひらの上の孫悟空と同じはずだった
この一戦がターニング・ポイントだと、双方とも気づいてはいなかったのだ
つづく