War to END WARS
【第六章】
〜The Longest Day〜
ここは、東京にある、DICEの研究所の一つ
外見はとても研究所になど見えないだろう
だがその実体は、DICEのSSが何重にも守りを固めた要塞
その要塞の最深部に二人の人物がいる
一人は、藍仙高校から誘拐された高校生、カスミ・アインハルト
もう一人はこの研究所の所長、備前 淳也
「なあ、カスミ」
・・・・
返事が返ってくるわけはない、カスミはすでに特殊容器の中で眠っている
いや、眠らされていると呼ぶのが正しい
「・・・悪く思うなよ、これも宿命ってやつだ」
彼も、DICE本部が何者かに壊滅させられたという話は知っていた
彼だけは知っていた、先生の正体も、DICE本部を壊滅させたのが何者かも
そう、それこそが彼の望んだ力だった
圧倒的な力、従来の兵器では決して得られぬ究極の力
「・・・俺もあいつには勝てるわけがないからねぇ」
最初に彼の存在を知ったときには、別に気にもとめなかった
結局は駒の一つに過ぎないはずだった
だが、彼はすべての時間を研究に費やすことが出来た
それがなにを意味するのか、それを思い知らされたのが
Ｐ−３を見せられたときだ
もっとも、すぐにE.N.Dが完成したためＰ−３の真の価値を
生かす事は出来なかったのだが・・・
「・・・・だが、俺の望みを叶えるにはこれで十分だ」
「なんかDICEも大変なことになってるんだなぁ」
「誠志郎君、なに人ごとみたいに言ってるの」
「人ごとには違いないだろ」
「でも、一体誰がこんな事を？」
「そうだな、ショーン・コネリーかティモシー・ダントンか
ロジャー・ムーアか・・・・」
「ＭのつくDICEの研究員が自爆したんじゃないの？」
「そりゃねえだろ、ウィキッド・ディザイアじゃあるまいし」
「・・・なんにせよ、一息つけるのか？」
「あんたたち！今回の事件で何人犠牲になったと思ってるの！」
「おいおい理子ちゃん、俺達がやった訳じゃないだろ
大体俺達はDICEの連中に殺されかけたんだぜ」
「・・・・・・」
「おい、カスミ」
「え…よ、呼んだ、誠志郎くん」
「なんだよ、ぼ〜っとして」
「う、うん・・・ちょっと、ね」
「大丈夫なの？事件の話を聞いてからずっと上の空だけど」
「・・・う、うん・・・なんでもないよ、なんでも」
「とてもそうは見えないけどな」
「・・・それは・・・悲しい事件だから」
「確かに悲惨な事件じゃあるよな、それにしても誰がなんのためにやったのやら」
「DICEに恨みを持ってる人は少なくないだろうし、
内部抗争も激烈らしいけど、ここまでやる相手は想像もつかないわね」
き〜んこ〜んか〜んこ〜ん
「お、やべえやべえ昼休みがおわっちまう」
「後れないようにしなさいよ」
「理子ちゃんもな」
「私はここで授業なの」
「いいよなぁ、理子ちゃんは教室移動が無くて」
「無駄話している暇はないんじゃないの？」
「やべ、そうだった」
ばたばたばた・・・
「こらっ！廊下を走るんじゃありません！」
もちろん、十夜達４人が聞くはずもない
「はあ・・・今回ばかりは私にもお手上げかも」
アインハルト事件・・・・・・
・・そのときにカスミの居所を突き止めることが出来た最大の理由は、
カスミの親族を当たればよいことが見当ついたからであった
園宗寺にさらわれたカスミを見つけだしたときには、
真端たち外地会の協力があった
だが、今回はそのどちらも期待できない
「もう、DICEがこんなにたくさん物件を所有してるなんて」
空木が音を上げるのも無理はない、DICE所有の建物を虱潰しに
調べていた日には１年や２年すぐに経ってしまうだろう
もちろん、それでは手遅れなのだ
「・・・一時間休息する、その間誰も取り次がないように」
「かしこまりました、支部長」
支部長付きの秘書が下がると、園宗寺はソファーに身を投げ出した
とにかくつかれることだらけの一日だ
マスコミの取材攻勢はいつものことである
日本支部の指揮下にある組織は訓辞を垂れるだけでひとまず済ませることが出来た
たったそれだけのこと・・・だが、それだけのことに
半日費やしてしまったのだった
「・・・・・・」
園宗寺には、一つ、引っかかることがあった
それがなんなのかはよく分からない、だが、何か引っかかるのだ
何気なく、イデア研究に関するレポートに目を通す
「完成されたオーギュメントに簡易ディゾナントを組み合わせれば
確かに不可能ではない・・・だが・・・」
そう、DICEの本部を本気で襲撃するつもりなら軍隊が必要だろう
それも特殊コマンドで１００人前後・・・普通の部隊で攻めるなら
１０００人は投入しなければなるまい
テロリストなどでは絶対に集められない戦力、国家にして始めて可能な作戦
そして、どう考えても、一国家がDICEと戦争を始めるメリットは無いはずなのだ
「無意味な破壊・・・・」
世の中に破壊を目的として生きている人間は少なくないだろう
だが、大抵はそれを実行する実力の持ち合わせはない
一方、それだけの実力を持つならなにも破壊活動などする必要はない
確かに、園宗寺には、一人だけ、そういう人物に心当たりがある
意志と、実力を兼ね備えた人物に
だが、彼は死んだはずだ・・・だが・・・何かが引っかかる
「！…」
手元にあるのは、藍仙高校襲撃時のレポート
確か、彼らの護衛に佐伯をつけたはずなのに、佐伯の存在が
全く記載されていない
この処置は機密を護るために誰にも話してはいなかったのだが・・・
・・それにしても、おかしな話には違いないのだ
園宗寺は電話を取り上げると、一人の人物を呼びだした
『・・・・はい、霧生です』
「忍か？私だ」
『なんのご用ですか？』
「忍、すぐに藍仙高校へ行って佐伯がどこへ消えたか調べてくれ」
『・・・はい、直ちに藍仙高校へ行き、佐伯の行方を調べてきます』
「報告はすぐに電話を入れろ、いいな」
『はい、すぐに電話します』
受話器を置くと、園宗寺はソファーに横たわって仮眠を取り始める
眠れるときに、眠れるだけ眠っておく
激務に耐える第一条件であった
というわけで、ここは藍仙高校の理科教室
時は放課後、いつもの生活ならここからどこかへ繰り出せるはずなのだが
DICEがカスミをつけねらいだしてからこちら、学校の外へは
一歩も出ることが出来なくなっていた
フラストレーションも溜まろうというものである
「あら？佐伯さんならＪ．Ｂを探しに出かけてるわ
どこに行ったかは分からないんだけど」
「そんな馬鹿な！」
「そうわめくなって、耳が悪くなる」
「おまえ達、よくそれで平然としていられるな」
「あのなぁ、園宗寺が俺達に門前払いくらわせなければ
初めから分かっていたことなんだぜ」
「でも、普通は信じないと思うよ」
「カスミ、おまえ妙に人がいいんだな」
「と、とにかく園宗寺さんに連絡を入れる」
「まあ待てよ霧生、まだ話は全部終わってないぜ」
「まだ言うことがあるのか？」
「・・・カスミ・・・いや、Ｐ−３、説明してやってくれないか？」
「うん、いいよ十夜くん」
「Ｐ−３・・・どういう意味だ？」
「えっとね・・・なにから説明すればいいかな？」
そういうと、Ｐ−３はコンタクトレンズを外す
「ね、オリジナルとは違うでしょ？」
「オリジナル？？？クローン人間か何かなのか？」
「目の赤いクローン人間ってあんまりいないと思うよ
私は、カスミのコピー、完成されたディゾナントなの」
・・・・・どうしてこの言葉を口にするたび胸が痛むのだろう・・・
「ディゾナント・・」
「うん、それでね、オリジナルがＪ．Ｂにさらわれちゃったから
オリジナルを取り戻す手助けに来ているの」
「取り戻す・・・か、しかし、どうやって探すつもりだ？」
「存在波を確認できればすぐなんだけどね」
「ねえねえ、ぐずぐずしてないで早く出かけようよ」
「名城、たぶんその必要はないな」
「雲野、どうしてそういえるのよ」
「DICEの連中に探してもらおうぜ、外地会が頼れないんだしな」
「・・・まあいい、ともかく園宗寺さんに連絡を入れる」
そういうと、霧生は園宗寺に電話を掛ける
報告が要領を得ないのは致し方あるまい
明らかに霧生の理解力の範囲を超えているのだ
「・・・・・はい、はい、、分かりました」
「で、園宗寺はなんて言っていたんだ？」
「園宗寺さんは、今からこちらに来られるそうだ」
夕闇迫る頃、藍仙高校の理科室に一人の人物が現れた
まるでファーストフードのウェイトレスの様な服装に
ねこみみ帽子、どこぞのマスコットキャラクターを模したように見える
とはいえ、二度目にはさほど衝撃はないようだ
「まってたぜ、園宗寺さん」
「なぜ分かった？今度も自信があったのだがな」
「そんな妙な格好で現れるのはあんたぐらいだ」
「・・・・ふむ、それは盲点だったな、今度から気をつけよう」
園宗寺はそれだけ言うと、空木に質問を始めた
「空木、Ｊ．Ｂがカスミを誘拐する所から説明してくれ」
「分かったわ・・・」
・・・・・
「・・・・というわけよ」
「信じられない話だな、コピー人間が作れるとは…」
「それで、これからどうするの？」
「Ｊ．Ｂの目的は一つしかないだろう」
「・・・すべての破壊ってやつか」
「その通りだ」
「園宗寺さん、これからどうするのでしょうか？」
「まあまて忍、…状況を整理しよう
まず、カスミがＪ．Ｂにさらわれた、これが一点
次に、先生はカスミのコピーを作れる、これが二点目
次に、DICE本部が何者かに襲撃された、これが三点目
・・・・・・さて、われわれはなにをするべきか？」
「…俺達はカスミを連れ戻す、ほかになにもない」
「十夜くん・・・」
「Ｐ−３、先生はなんのためにおまえがここにくるように言ったのだ？」
「だから、先生はオリジナルを取り戻す手助けをするようにって」
「カスミ本人を取り返す・・・それで、先生はなにを始めるつもりだ？」
「戦争を終わらせる研究だって」
「戦争を終わらせる研究、か・・・」
「なあ、その先生って奴も十分危ないんじゃないか？」
「それよりＰ−３、先生というのは何者だ」
「だから、私にもよく分からないの」
「・・・・・・・」
「まあいい、Ｊ．Ｂの居所は私も調査することにしよう」
「私達はどうすればいいの？」
「空木、おまえ達は今まで通り学校にいてくれ
こういう調査は組織の力を使った方が早い」
「ええ、そうね・・・DICEの研究所のどこかだとは思って
調べるつもりだったんだけど・・・」
「東京のどこかっていうは本当なのか？」
「先生はそう言ってたの」
「・・・・まあいい、地道な調査以外手はない・・
忍、かえるぞ」
「はい、園宗寺さん」
「早いとこ頼むぜ」
「分かっている」
こうして、さらに一週間近くが過ぎ去っていった
待つ身が辛いか、待たせる身が辛いか
もっとも、十夜達はそんなことに思い悩むはずもなかった
いや、本当は思い悩むことを避けていたのかもしれない
「十夜くん、そこ、違ってるよ」
「え？」
「あはは、雲野、しっかりしなよ」
「瞳さんも、綴り、間違ってるけど」
「え゛」
「こら、誠志郎君さぼらないの！」
「あ〜あ、なんか理子ちゃんが二人になったみたいだなこれじゃ」
「もう、大学に行って恐怖のＯ．Ｂとして名を馳せるんでしょ」
「そんな事考えてたの？」
「ああ、あれは冗談だって」
「ひっど〜い、わたしは本気で聞いていたんだからね」
「カスミも手が止まってるわよ」
「え、でも、わたしが受験に行く訳じゃ・・・ううん、なんでもない」
一見、普通の日常が続いているように見える
だがカスミはその場にいない・・・・そう、本物の、カスミは
そんな日常を破る連絡が入った
「・・・はい、空木です・・・はい、外線ですね
今かわります・・・・はい、空木です・・・
・・・園宗寺さん？はい、はい・・・・
分かりました、それで、園宗寺さんは・・・
・・・ええ、確かにその通りですけど・・・
・・はい、佐伯さんは見つからない・・・はい
・・・はい・・・住所は・・・ええ、アクセスできます・・・
・・・・はい、・・・・・分かりました、すぐに」
「理子ちゃん、何かあったの？」
「ちょっと待って」
そういうと、空木はすぐにインターネットにアクセスする
言われたとおりのURLを入力すると、そこにはとある店の地図があった
「これじゃ見つかる訳ないわね・・・・」
「どうしたんだよ、理子ちゃん」
「さっき、園宗寺さんから連絡があったの
Ｊ．Ｂの居所が分かったって」
「ふ〜ん、で、ここは・・・て、嘘だろおい！」
そう、その地図に書かれている場所は新宿のデパートだったのだ
「おいおい、真端さんもこんなものを見落としていたのか」
「ねえ、ここってDICE系だったの？」
「そうね・・・ここがDICE系だっていうのはわたしも始めて知ったわ」
「買収か何かじゃないのかな？」
「あり得る話ね」
「それで、園宗寺達は来るのか？」
「来ないらしいわよ」
「どうして？」
「・・・・・・・本部から締め付けがあるらしいのよ
さすがに支部長が自ら動くのは危険らしいの
応援は貸してくれるらしいんだけど・・・」
「応援って・・・」
「・・・とにかく、待ち合わせ場所へ行けば分かるそうよ」
「ふ〜ん・・・ま、行ってみるか」
「やれやれ」
「・・・どうしたの、カスミ」
「え、その・・・装備は今のままでいいのかな？って思ってたの」
「それは考えても仕方ないわ」
本当は、そんなことを考えていたわけではない
自分の気持ちがよく分からなかったから、とまどっただけ
本当は喜ぶべき知らせのはずなのだが…
ここは、新宿の地下街の喫茶店
十夜達はここで６時に待ち合わせだ
「・・・よく来たな」
「あれ？壬生さん・・・外地会は大丈夫なの」
「外地会は事実上解散した、今はDICEが外地会の業務を引き継いでいる」
「？？？なんかややこしい事になってるんだな」
「よくある話だ」
「Ｊ．Ｂの調査をしたのも外地会の生き残りだ」
「仇討ちとかそういうのはやらないのか？」
「敵を無意味に増やす必要はない」
「なるほどねぇ、ま、俺達にはどうでもいいことだけどな」
「それより、これからどうするのか説明してくれない」
「いいだろう・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・
「つまり、閉店後に突入して、カスミを救出するんだな」
「その通りだ、だが問題が二つある」
「二つ？」
「一つは通常のデパートとしての防犯施設があるだろうということ
もう一つはその上にDICEのSSが待ち受けているだろうと言うことだ」
「ねえ、でもＪ．ＢはもうDICEから切り離されているんじゃないの？」
「どうやらＪ．Ｂは護衛グループを洗脳しているようだな」
「洗脳・・・」
名城が表情を曇らせる
「・・・それに、奴らには簡易ディゾナントを作ることもできる」
「そうね、そちらにも注意しないといけないわね」
「ああ・・・・通常の防犯システムなら外地会のメンバーでも対処できるが
ＳＣ空間の戦いになれば、・・・」
「オーギュメント使いでないと戦えない、ってわけだな」
「その通りだ」
「簡易ディゾナントには負けないけどね」
「そう願いたいな」
「さ〜て、話が終わったら腹ごしらえ、だろ」
「まあ、好きなだけ食べておけ
最後の晩餐にならないとも限らないからな」
「縁起でもねえ事いうなよ、食欲がなくなるじゃねえか」
だが、誠志郎が、喫茶店の料理長の顔色を青ざめさせるぐらいに
食い倒したのは言うまでもないことであった
時間は１１時、だが大東京は眠らない
単に店が閉まっていると言うだけに過ぎない
そのデパートの前に十夜達は集合していた
「遅かったじゃないか」
「！さ、佐伯さん・・・一体どうして」
「ふん・・・あれだけ派手に外地会が動けば嫌でも耳に入る」
「そうだろうな、待っていたぜ」
「そうだと思ったよ、で、あたしの仕事はどうなってる？」
「部隊を二手に分ける、俺は外地会のメンバーと共に
デパートの防犯システムを遮断する
それ以外のオーギュメント使いは地下の研究施設に突入し、
カスミを連れ戻す」
「Ｊ．Ｂはやっちまっていいんだろ？」
「園宗寺はかまわないと言っていた、本部の敵を討つんだってな」
「・・・・・・なあ、俺達はどうすればいいんだ？」
「もう少し待て、もうそろそろ・・・・・」
ちょうどそのときに、通用門が開くと、そこから黒づくめの男が一人現れる
「壬生さん、地上階は確保しました」
「そうか、・・・・地下への入り口を捜索する」
「分かりました」
「みんな・・・気を引き締めていけ！」
「おう！」
「うんっ」
「ああ、任せとけって」
「ええ、分かってるわ」
「当然だ」
・・・・・この戦いが終わったら、オリジナルがかえってくる・・・・
「こっちだよ」
「Ｐ−３、何で分かるんだ？」
「オリジナルの存在波を感じるの・・・・ここからずっと下の方」
『ＳＣ空間を確認、オーギュメントを起動します』
「！ディゾナントか？」
「ううん、違うの、人間だとは思うんだけど・・・存在波がひずんでるから・・」
「存在波がひずんでる？」
「たぶん、洗脳されてるんじゃないかな？」
「洗脳って・・・DICEの連中はみんな思い詰めてるのか？」
「・・・・たぶん、薬物ね」
「薬物って・・・理子ちゃん」
「Ｊ．Ｂならやりかねないよっ」
「・・・・・そろそろいいんじゃないかな？」
そういって、Ｐ−３が無造作に曲がり角を曲がる
「あれ？誰もいないね・・・あ、あんなところにいた」
「・・・俺達にはよく分からないが・・・」
「存在波が不確定な状態で漂っているのよ
どうやらこのフロアは大丈夫なようね」
「ならとっととおりて行くぞ」
「なあ、エレベーターがあるけど、使わないのか？」
「エレベーターは危険だ、階段の方がいい」
「そこを裏をかいて階段の方に罠があるとか」
「普通、両方に仕掛けておかない？」
「そんな場所危なくて通れないだろ」
「それもそうだね」
現在十夜達はＢ３フロア、この下は本来無いはずのフロアだが・・
「う〜ん・・・存在波が弱いから、あんまり正確じゃないけど・・」
「もっとしたがあるんだな」
「うん、そうおもうの」
「とにかく突撃あるのみ！」
片や戦闘訓練を積んだ戦闘員
片や一人を除いて素人揃い
勝負は見えているはずであった
第一、こういう戦いは地の利を得て、数が多い方が絶対に有利なのだ
だが・・・・
『ＳＣ空間を確認、オーギュメントを起動します』
「やれやれ、またかよ・・・」
「あっちの壁の影に殺気を感じたの、たぶん誰かいるよ」
「隠し扉まで丸見えかよ」
「だって、このコンタクトつけていたら元々なんにも見えないもの」
「なんにも見えないって・・・じゃあ、いままでの学園生活はどうしてたんだ？」
「存在波を確認すれば見る必要はないから」
「ノクトビジョンつけての夜襲みたいなものだな」
「ノクトビジョン？」
「暗視装置のことだろ、赤外線を使ったり、スターライトスコープ見たく
ほんのわずかな明かりで相手を確認したりする」
「それ以上よ、壁の向こうまで分かるんだから」
「ほとんど一方的な勝負だねぇ」
「あなたたち・・・・」
「・・・油断は禁物、だろ？理子ちゃん」
「分かってるならきちんとやってよ・・」
こうして、十夜達はＢ５フロアに達する
「Ｐ−３、カスミはどこだ？」
「う〜んと・・・・もうちょっと下の方かな？」
「やれやれ、まだあるのか・・・」
「あ、上の方から団体さんが来た」
「もう、どれだけ相手がいるのよ」
「ＳＣ空間を展開してやり過ごしているだけだから
異常に気がついたら襲ってくるのは当然じゃないかしら」
「どうやら、話をしている暇はなさそうだぜ」
十夜の言うとおり、団体さんが階段と、エレベーターの双方から
ご到着である
それも、全員簡易ディゾナントになって
「一体どういうことだ？」
「Ｊ．Ｂらしいわね・・・簡易ディゾナントは
一目見れば普通じゃないのが分かっちゃうから、
何かあったらコアブレインを組み込むように命令しておいたのよ」
「極限まで性根の腐った奴だ」
しかしながら、有効な作戦には違いなかった
さらにＳＣ空間を確認してディゾナントの群が襲いかかる
どうやら、ここまで無事に通れたのも、こうなると罠の一種に思えてくる
「どうやら、これで終わりみたいだな」
「ああ・・・・まったく、いくら叩いてもきりがなかったねぇ」
「E.N.Dとの最終決戦前じゃもっと多かった」
「・・・・・あとは、Ｊ．Ｂを倒してカスミを取り戻すだけだな」
「うん、そうだね」
そう、後はＪ．Ｂを倒すだけ・・・そうすれば、オリジナルを取り戻せる・・
・・・・そして・・・そうなったら・・・・・わたしの存在は・・・
油断があったというのだろう
今までＰ−３が存在波を確認しているからこそ奇襲を避けてこれたのだ
だが、今Ｐ−３はとりとめのない思いにとりつかれていて、
その結果注意力が落ちていて、存在波を確認するのに後れて、、、
「さ、カスミを助けにいこっ」
名城が、階段へと足を向けた瞬間、銃声が、響いた
ＳＣ空間の展開を告げるコアブレインの無表情な声と
佐伯が撃ち返す銃声とは、同時だったろう
そして、名城が崩れ落ちるのも
つづく