私の名前は雲野霧子、品川第2小学校3年生。パパは雲野十夜、ママは雲野カスミ。
パパやママは、昔、ヨーロッパが消滅した事件を解決した英雄の一人なの。
だけど、そんなのはマスコミとかに報道されてないから、そのときの仲間達以外は誰もしらないの。

あの大戦争を解決したのは、DICEの特殊部隊ってことになってるの。
あながち間違いじゃないよ。パパやママも、DICEの特殊部隊に所属して戦ってたから。
だけど、今のパパは藍仙高校の体育教師だし、ママは藍仙高校の物理教師をやってるの。

私は今登校中、そろそろ友達と待ち合わせの場所に来るはずなの。

「やっほー、霧子、今日も元気？」
「私は元気なの。泪は元気なの？」
「もちろん、私から元気をとったら取り柄ないし」
「そんなことはないと思うの、でも、泪が元気でよかった」

今挨拶したのが、友達の柊泪、泪のパパは柊誠志郎、ママは柊瞳。
パパやママと、泪のパパやママはやっぱり友達なの。
戦友でもあるそうだけど、詳しい話は、パパやママも、誠志郎おじちゃんも、瞳おばちゃんもしてくれないの。
きっと、話したくない事情があるんだよね。無理に聞くと悪いと思って、聞いてないの。

「あー、それにしても今日もお勉強かあ、なんか憂鬱……」
「子供はお勉強がお仕事だっていうのがママの口癖なの。
　その分、放課後は思いっきり遊びなさいって」
「お勉強がお仕事かあ。お勉強がこんなにめんどくさいなら、本当のお仕事ってどれだけ大変なんだろう」
「その分放課後遊ぶといいの。泪、放課後なにする？」
「その前に、霧子、頼みがあるんだけど」
「宿題を見せるのはかまわないけど、漢字の書き取りとかは見せても仕方ないと思うの」
「あはは、そうかも。けど、算数だけでも写させて」
「いいの。けど、テストの時、それだけじゃ大変なの」
「じょぶじょぶ、私、こう見えても山かけは得意だから」
「うん、確かに、テストの点数は泪も同じぐらいあるよね」
「でしょ、だから今日は写させて」
「いいけど、急いで登校しないと、写す時間もなくなっちゃうの」
「わ、それは大変、急がないと」
「早く出てるから、そんなに走らなくても大丈夫なの」

泪は急いで登校しようとするの。
始業時間の10分前に、歩いても間に合うぐらいの時間には出てるから、本当は急がなくても大丈夫なの。
一時間目は算数だから、書き取りほど時間かからないの。
あとは、休憩時間を使って写せばいいの。

私は、その間に、その日の宿題をやっちゃうの。
そうすれば、翌日には、また泪が宿題を写して、私が宿題をすることができるの。

早足で歩いて、学校に到着。
ホームルームが始まる前に泪は私の宿題を見ながら写していくの。
だけど、泪だってただ写してるだけじゃなくて、私の間違いを指摘してくれることもあるの。
直感力は、私は泪に劣ってるかな。
私だって能力者なのに。

あ、能力者の説明をするのを忘れたの。
能力者というのは、存在波を生まれつき感知できる人のことなの。
ママのカスミも、能力者の一人なの。
泪のママの瞳おばちゃんも、特異な能力者なんだって。
何がどう特異なのかは分からないけど、能力者としてはママより上かも。

「はい、そろそろ授業を始めますよ」
「はーい、壬生先生」

うちの担任は、新任の壬生由佳里先生なの。
既知の能力者の中で最強って、ママが言ってた。
だから、泪が宿題を写したのもばれてるはずだけど、あえてお目こぼししてくれてるの。

「はい、じゃあ、今日のお勉強を始めましょう。
　まずは教科書の……」

私は文系少女で、算数は得意というほどじゃないの。
泪は逆に、国語がちょっと苦手で、算数や理科は得意みたい。
私のママは物理の先生なのに、何故か私は文系、親に似なかったのかな。

そんなこんなで放課後がやってくるの。
放課後になれば、勉強から解放されて、遊ぶ事ができるの。

「こんちは〜」
「あ、こんにちは、霰おばちゃん」
「あー、霧子、おばちゃんって言うなって言ってるのに」
「だけど、カスミママの妹だから、おばちゃんに間違いないの」
「霰おばちゃんこんにちは」
「あー泪までおばちゃん呼ばわりする〜」
「瞳ママとは、姉妹なんでしょ？　ママから聞いたよ」
「んー、姉妹といえばそうだし、違うといえば違うんだけど、ま、瞳が姉妹って言ってるならそれでいいか」

瞳おばちゃんと、霰おばちゃんの関係は割と複雑みたいなの。
複雑みたいだから、どういうことか私は詳しく聞いてないの。

「由佳里ちゃんは元気してた？」
「壬生先生ならいつも通りだったよ」
「良かった」
「ところで、霰おばちゃんはどうしたの？」
「言うまでもなく、遊ぼうと思って」
「遊ぼうって、何をするの？」
「ゲーム機あるでしょ、FPSやろ、FPS」
「泪、どうするの？」
「えー、霰おばちゃんとテレビゲームやるの？　いやだよ、だって霰おばちゃん
　無敵なんだもん。少しは私達も勝てるゲームがいい」
「じゃあ何やる？」
「っていうか、霰おばちゃん、他にすることないの？」
「あはは、今日は非番なんだ、だから特にすることない」
「DICEも平和なの？」
「ヨーロッパ消失事件が終わった後も、戦争の火種は消えてないけど
　私の出る幕はそんなにないかな。
　とにかくぶっ壊せばいい、っていうのなら私の出番だけど
　テロリストとの戦いみたいに、敵味方混在っていう戦いになると
　P-8とか、訓練した能力者が必要みたい」
「霰おばちゃんも能力者なんでしょ、テロリストと一般市民の区別つかないの？」
「あはは、私がやるとついつい見境なくなっちゃうから、それに、テロリストがテロをやる前に
　ぶっ殺したら殺人だし」

霰おばちゃんは、DICEの特殊部隊のエージェントです。
エージェントは普通顔を見られたらいけないことになってるはずですが
霰おばちゃんは、普通に顔を見られてて、特に気にしてません。
圧倒的な戦闘力で、相手を畏怖させるんだって笑ってました。
本当にそれが言えるぐらいに強いから、恐ろしい人です。

「霰おばちゃん、とりあえずうちにくる？
　パパもママも仕事で遅くなるから、今日は家で泪と遊ぶことにしてたの」
「賛成！　とりあえずおやつは作ってあげるから」
「また家の冷蔵庫を引っかき回すの？」
「ちゃんとしたおやつを作ってるでしょ」
「それは認めるの。だけど、霰おばちゃんも一緒に食べてるの」
「そりゃま、労働の報酬かな」
「霧子、そろそろ行こうよ、校門の前で話をしてても遊べないよ」
「そうだね、泪、じゃ、霰おばちゃんも一緒にいこう」
「じゃ、出発〜」

霰おばちゃんを先頭に家を目指します。
うちは品川のマンションなの。
うちはパパ、ママ、私の3人ぐらしなの。
だけど、パパもママも仕事が忙しくていつも夜は遅くなるの。
それで、門限はないけど、外は物騒だから日が暮れるまでには帰るように
パパとママに厳命されてるの。
うそをついても、能力者のママには通用しないので、日が暮れるまでには帰るようにしてるの。
うちで遊べば、日が暮れても安心なの。

「よし、じゃあ金太郎建設だね」
「それならまだFPSよりましなの」
「それでも霰おばちゃんは強いよね」
「ふっふっふ、およそゲームと名の付くものなら私の右に出るものはそういないって」
「囲碁将棋はそんなに強くないのに……」
「あはは、ゲームはやっぱ運の要素とかアクション要素がないとね」

あんまり、難しく考えるゲームだと、霰おばちゃんは苦手なの。
だけど、運で勝負するゲームとか、アクションゲームだと、本当に私達じゃ勝負にならないの。
ゲームプロになっても、超一流になれるんじゃないかと思うの。

「ふっふっふ、昔はロケテ破りの霰ちゃんとして、恐れられたこともあるんだよ」
「今でもやってるの？」
「今はやってないってば。顔を知られたらロケテ破りは通用しないんだよ」
「そういうものなの？」
「そういうものなの」

結局、ゲームは霰おばちゃんの圧勝に終わりました。
やっぱり、こういうゲームじゃ霰おばちゃんにかないません。

「あれ？　メールだ、誰からだろう……園宗寺さんからだ」

霰おばちゃんは、ワンパス暗号で暗号化されたメールをすらすらと読みます。

「ごめん、霧子、泪、今日はもう帰る」
「帰るの霰おばちゃん、じゃあ、泪を連れて帰って欲しいの」
「ごめん、それも無理、アメリカまでひとっ飛びしないといけない用事だから」
「そうなの？　だけど、泪一人で大丈夫かな」
「心配なら泪は瞳に連絡入れて迎えに来てもらって。
　私は急ぎの用事なんですぐ飛ぶね、じゃ」

そう言うと、霰おばちゃんは、量子跳躍でアメリカに飛びました。
簡単にいうと、テレポートです。

「だけど、うちのママも夜は遅めだよ」
「けど、高校の先生してるうちのママほどじゃないの。
　とりあえず、メール入れて」
「うん、分かった」

この、霰おばちゃんの跳躍が、新たな事件の始まりである可能性は私達も思いついたの。
しかし、それが私達を巻き込むとは、まだ、私達には想像もできなかったの。

 

 

 

---