「パパ、今日はいろんな事があったの」

私の名前は雲野霧子、品川第二小学校三年生。パパは雲野十夜、ママは雲野カスミ。
今は今日起きた出来事をパパとママに報告中なの。

「街一つ吹っ飛ばせる相手か、さすがにもう子供の出る幕じゃないな」
「パパ、だけど、相手は子供なの」
「それは分かってる。しかし、何もおまえがやる必要はないだろう。
　霰に連絡して、DICEのエージェント達に任せるべきだ」
「そうかもしれないの。だけど、私はあの子のことを信じたいの」
「信じるって、どういうことなの」
「そんなにむちゃくちゃな力を持っていても、私達相手には使おうとしなかったの。
　街を破壊してオーパス集めをすることもしなかったの。
　きっと、あの子にはあの子なりの事情があると思うの。
　私はそれを知りたいの」
「その調査自体、DICEに任せればいいんじゃないかな」
「ママ、だけど、私は……」
「霧子、明日の朝は早いぞ」
「どうしたの、パパ」
「オーパス集めをするだけなら、今の霧子でもなんとかなるかもしれない。
　しかし、あの子の事を知りたいということなら、フェイトという子より強くなる必要がある」
「そういうものなの？」
「いずれ、あの子は本気でオーパス集めをする時が来る。
　今は余裕がまだあるから、霧子や泪を相手にするときは手加減してくれている。
　だけど、フェイトのママ……プレシアが、のんびりとオーパスを集めるのを待ってくれるとは限らない。
　管理局がオーパス集めを始めたなら、管理局相手に一勝負と言うこともあり得る。
　管理局は、霧子の話を聞く限り、フェイト達相手に手加減などしてくれないだろう」
「それと、私がフェイトより強くならなきゃならない事とはどうつながるの？」
「フェイトが本気になっても、おまえがフェイトを押さえるんだ。
　フェイトのことが気になるのなら、おまえの力でフェイトの暴走を止めなければならない。
　管理局やDICEに任せれば、フェイトの処遇を決めるのは、管理局なりDICEなりになる。
　おまえが止めれば、おまえにも発言権ができる」
「パパ、私、あの子より強くなれるかな」
「なれるかな、だったらやめておけ」
「十夜くん、それは厳しすぎない？」
「厳しすぎはしないだろう。言葉は足りないかもしれないが。
　なれるかなれないかは問題じゃないんだ。
　俺たちがDICE相手にカスミを取り返すと誓ったとき、
　DICEはあまりに強大だった。
　それでも、俺たちはDICEに立ち向かうことにした。
　それが俺たちのするべき事だったからだ。
　霧子も、フェイトという子の事が気になって、話がしたい、というのが
　本当にするべき事だというのなら、なれるかな、じゃ覚悟が足りない。
　かならず強くなる、でなければならない。
　第一、明日からの修練は厳しいぞ。十分な覚悟がなければ、音を上げるが落ちだ」
「……分かった、パパ、私はかならずあの子より強くなる。強くなってあの子のことを知る」
「よし、よく言った。じゃあ今日はもう寝なさい。
　明日からはP-3と一緒に空を飛ぶ訓練からだな」
「え？　ロンギヌス・スピアには空を飛ぶ機能なんてなかったと思うの」
「封印してただけだ。万が一、またK-unitの暴走が起きないとも限らないし
　そのとき、前回の程度の規模で済むとも限らない。
　だから、霧子や泪のような、能力者用のオーギュメントは、緊急時には
　飛行能力も与えられるように作ってある」
「それなら、オーギュメントの性能ならあの子に負けないってこと？」
「フェイトが持ってるオーギュメントの性能が分からないからなんとも言えない。
　だが、霧子が持ってるオーギュメントは、第三世代をのぞけば最高水準の性能がある。
　あとは、おまえがその性能を引き出せるかどうかだ」
「うん、分かったの。かならずあの子……フェイトより強くなるの」
「よし、いい返事だ。分かったなら早寝しろ。明日からすぐ特訓に入るぞ」
「分かったの」

私はパパの特訓に備えて寝ようとするの。
だけど、目がさえてなかなか眠れないの。
普段よりかなり早く寝ることになったから、というのはあるの。
だけど、それより、今日いろんなことが起きすぎて
考えがまとまらない、って事もあるの。
そういえば、泪は泪で特訓するのかな。
泪に聞いてみたいけど、携帯は今パパに取り上げられてるの。
寝るのに邪魔になるだろうからだって。
無くても寝付けないのに。

それでも、ベッドの中でゴロゴロしてたらいつの間にか眠ってたの。

「起きろ、霧子。始めるぞ」
「はい、パパ……だけど、まだ3時だよ」
「急いで強くならないといけないからな。
　今日は徹底的にしごくぞ。
　まずは、飛行訓練からだ。
　ロンギヌス・スピアは持ったな」
「うん、パパ。そうだ、泪はどうしてるかしらない？」
「泪も誠志郎が瞳と一緒にしごかれてる頃だな」
「そうなんだ、良かったの。泪はひっこんでろ、なんて話にならなくて安心したの」
「よし、安心したなら特訓開始だ。
　促成栽培で鍛えるんだから、覚悟しておけ」
「はい」

ケンカなら、パパ譲りで負けない私でも、パパには到底かなわないの。
そのパパが徹底的にしごく、って言ってるから、大変なことには間違いないの。
だけど、必ず私は強くなる。そうしないと、フェイトとはわかり合えないのなら。
 

 

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