フェイトと名乗った女の子と、アルフと呼ばれたお姉さんはSC空間を離脱していったの。
SC空間を展開しておく理由もないので、私達はSC空間を解除したの。

「存在波を確認したの。来たのはあの二人なの」

P-3から、二人の少年の足下に、光が当たってるの。

「泪、油断は禁物なの」
「霧子、分かってるって」

通常空間戦でなら、SC空間を展開することで逃げることが出来るの。
でも、相手がフェイト達みたいに、SC空間戦ができるようなら、SC空間展開からのカレイドフェノム発動がありうるの。

「身構えなくていい、僕たちは話をしに来ただけだ」
「僕たちって、誰なの？」
「僕は時空管理局執務官クロノ・ハラオウン。こっちの緑の服を着ているのが、考古学者ユーノ・スクライア」

二人とも、どうみても子供なの。クロノと名乗った少年は、それでも私達よりは年長っぽいんだけど
ユーノと紹介された少年は、私達と同い年ぐらいに見えるの。

「もしかして、異世界人ってみんな子供の格好をしてるとか」
「それは無いと思うの、泪、アルフはちゃんと大人に見えたの」
「それもそうか」
「無駄話はそれくらいでいいだろう。僕たちの話を聞いて欲しい」
「聞くのはかまわないの。言うとおりにするかどうかは別問題なの」
「時空管理局について聞いたことは？」
「あるの。だけど、どんな組織かはしらないの。異世界の人の集まりってことぐらいなの」
「時空管理局というのは、大雑把に言うと、次元世界を移動出来る世界の安全を確保するために組織された存在だ」
「次元世界って？」
「おかしいと思わなかったかい？　異世界人がこの世界と同じ格好をしてるなんて」

そう言って話しかけたのは、ユーノと紹介された、緑の服を着た少年です。

「おかしいとは思うの。だけど、それがどうかしたの？」
「異世界人だけじゃなくて、異世界同士で生物相や大気組成まで似通っているというのは、偶然ではありえないことだよ。
　その、住人や生物相や大気組成まで似通ってる世界同士は、次元の海でつながっている。
　その、次元の海でつながっている、似たような世界の集まりのことを、次元世界と呼ぶんだ」
「それで、なんで世界が似通ってるの」
「それは分からない。僕らにも分からないことはある」
「ともかく、次元世界は住人や生物相や大気組成は似通っているけれども、文明の進み具合はそうじゃない。
　未開世界もあれば、高度に発展した文明を持っている世界もある。
　そして、発展しすぎて滅亡した世界も。
　その、滅亡した世界を滅亡させる原因になった存在、それをロストロギアと呼ぶ」
「それが、今私達にどういう関係があるの？」
「それは今から説明する。
　時空管理局の主要業務は、ロストロギアが悪用されたり、暴走しないように管理することだ。
　そして、君たちが今集めている、ジュエルシードは、ある種のロストロギアなんだ」
「どんな危険性があるの？」
「それはユーノが説明する」
「ジュエルシードは僕が遺跡から発掘したんだ。
　詳しい分析のためにクラナガンに送る途中で、時空航行船に事故が起きた。
　その結果、ジュエルシードがこの世界に落下することになったんだ。
　ジュエルシードについて大雑把に言うと、高エネルギー結晶体になる。
　その力が正しく解放されるなら、普通に高エネルギー源。
　だけど、扱いを間違えれば、次元振を起こす可能性がある」
「次元振って？」
「地面が揺れれば地震、次元空間がひずんで揺れれば次元振。
　地震が地面を揺らし、時として地割れや断層を生み出すように　
　空間が揺れて空間の裂け目や崩壊をもたらすのが次元振。
　これは極めて危険なことなんだ」
「そうかどうかは調べれば分かると思うの」
「その過程で過ちが起きないとも限らない。これは管理局で管理すべきものなんだ」
「それで、どうしてそんなことを私達にいうの？」
「君たちがジュエルシードを集めてるからだ。
　これは非常に危険なものなんだ。扱いを間違えれば
　少なくとも、第97管理外世界……つまり、この世界を滅ぼしかねないぐらいに」
「少なくとも？」
「ひどければ、いくつか世界を纏めて吹き飛ばしかねない。
　そんな危険は放置できない」
「だけど、それを信用白って言われても困るの。
　多分、先生や空木教授ならオーパスぐらい扱いを間違えずに調査できるの」
「多分じゃ困るんだ」
「あなたたちが間違えない保証もないの」
「つまり、引き渡してもらえないということかな」
「フェイトって子も集めてたけど、理由は教えてくれなかったの。
　あなたたちはそれに比べれば理由を教えてくれただけましだけど
　それでも、あなたたちがでまかせを言ってない保証はないの。
　たぶん、私達に言うより、園宗寺さん達と話をするべきだと思うの」
「それはリンディ提督がやっている。だけど、ことは急ぐんだ」
「どうして？」
「扱いをちょっと間違えれば世界を吹き飛ばしかねないからなんだ」
「それが本当かどうかも分からないよね」
「堂々巡りってことかな」
「……待った。フェイトって子も集めてるって言ったね」
「言ったの」
「その、フェイトっていうのは何者なんだ」
「知らないの。ママのために集めてるって言ってたってことしか」
「ママ？　誰なんだ、その母親は」
「プレシアって言ってたの」
「プレシア？　下の名は？」
「テスタロッサ」
「プレシア・テスタロッサか……管理局で調べてみる必要があるな」
「調べるのはいいけど、このオーパスはどうするの？」
「この世界じゃ高エネルギー結晶体をオーパスと呼んでいるのかい？」
「この世界だと、ディゾナントのコアになるものがオーパスだよ」
「ディゾナント？」
「オーパスから生み出されるSC空間でも定位できる化けものだよ」
「SC空間……閉鎖空間のことかな」
「さっき、展開されてた空間を閉鎖空間って呼ぶなら、その通りなの」
「ユーノ、どう思う？　この世界の魔法文化レベルだ」
「次元移動は不可能ながら、魔法は使える。文化レベルCだね」
「難しいな、時空世界に招待するには文化レベルが低い。
　だが、ロストロギアはそこにある」
「強制介入はできないのかな」
「時空管理局には管理外世界と戦争する権限は与えられていない。
　文化レベルCというのはやっかいな相手だよ」
「もっとましなものと引き換えにして手に入れる方法はないかな」
「君は気づかないかい？　この世界はある意味では我々より魔法技術が進んでいる。
　あの魔道炉は我々の世界にはないものだ」
「……この世界の住人が、K-unitと呼んでいる動力源の事かい」
「そうだ。我々の魔道炉はあんなに小さくないし、出力も大きくない」
「いっそ時空世界に参加を求めた方が良くないかな」
「それを決めるのは評議会だ」
「急場には間に合わないって事かな」
「そうだ

なんだか、私達を無視して少年二人で話を進めてます。

「それで、ジュエルシードはどうするの？
　門限があるから、そろそろ帰りたいの」
「渡してくれと言っても、渡してくれないんだろう？」
「それはもちろんそうなの」
「だが、君たちが持っていても、おそらくフェイトという子には勝てない。奪われるだけだ」
「どうしてそう言えるの？」
「君たちは次元跳躍もできなければ、飛ぶこともできないだろう」
「私達のデバイスじゃ確かに飛べないし、量子跳躍も出来ないの。
　だけど、P-7おばちゃんなら、飛べるし、跳躍もできるの」
「跳躍はどこにできるのかな」
「地球上ならどこでも飛べるの」
「でも、君たちにはできない」
「残念ながら出来ないの」
「それじゃあ、君たちは勝てない。あの二人の跳躍時に魔力を測った。
　暫定値だが、魔力レベルAAAだと思われる。
　これだけの魔力があれば、半径5ｋｍ程度を破壊するには十分だ」
「歩く核兵器ってこと？」
「そうとってもらってかまわない。君たちが生きていられるのは、あの二人が手加減してるからに過ぎない」
「つまり、私達もP-7おばちゃんぐらいに強くならないといけない、ってことだよね」
「その、P-7おばちゃんというのは？」
「島一つぐらいなら、成層圏に吹き飛ばせるぐらいの力の持ち主だよ」
「魔力S級以上ですね。そのP-7おばちゃんというのは」
「だけど、君たちはそうじゃない。君たちが持ってる所を襲われたらどうしようもない」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。これからの訓練しだいだよ」
「……リンディ提督が呼んでる。長居をしすぎたようだ」
「私達も門限が近いの」
「とにかく、考えておいて欲しい。ジュエルシードは危険なものだし、それを管理するのは
　おそらく、この世界の手に余る」
「そうかどうかは空木教授が調べてくれると思うの」
「僕と同じ結論を出してくれることを祈るよ。取り返しの付かないことになる前ににね」
「どうなるかは分からないの」
「じゃあ」

二人の少年は、跳躍して消えたの。
私達は門限に間に合うよう急いで帰るの。
パパとママに相談して、強くならないといけないし。

 

 

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