なのはおばさんとの出会いもあった合宿が終わると、私達は地球へ里帰りなの。

「でも、私達にとっては合宿の延長みたいなものですね」
「そうかもしれないの、アインハルトさん」
「練習休みが長引くと、元に戻すのが大変だからな。結局ジムのメンバー全員行くことにした」
「ジムは大丈夫なんですか、ノーヴェさん」
「ああ、それは大丈夫ミウラ、バイトならユミナに任せておけばいいし、一般のお客さんの事なら、ミカヤ達に頼んである」
「こんどはミカヤさんが大変そうです」
「まあな、けど、霧子や泪も、一年丸々こっちって訳にもいかんだろうからな」
「地球ってどんな世界なんですか」
「どんなっていうか、まあ、東京はあんまりこっちと変わらないかな、ミッドチルダだって広いし、地球だっていろんな場所はあるけど」
「さて、そろそろ乗船するぞ、遅れるなよ」
「はい」

次元航行船に乗って、地球への里帰りなの。
ミッドチルダ組にとっては、地球への遠征。
あ、大事なことを言い忘れてた。
東京と言っても、空気はもう悪くないよ。だって、エネルギー源が全部K-unitに変わったから、排気ガスとか出す車もなくなったの。

「フェイトちゃん達とも久しぶりだね。ミッドチルダ行きのタイミングをずらして、私達が合宿に出てる時にミッドチルダにフェイトとユーノの二人は帰ってるから
　私達が行くときには、品川にいるはず」
「品川？」
「東京の一部だよ。最近色々発展してるかな」
「そうなんだ」

窓の外は次元の海。久しぶりに次元の海を見るの。

「パパやママは元気してるかな」
「便りを見る限りは、特に病気もせず元気にやってるはず」
「うん、でも、便りは便り、直接会うのとはやっぱり違うの」
「直接会って、……少しは私達は成長したかな」
「わかんない。格闘の練習と、学校の勉強で手一杯だったの」
「留学生だからね、少しは勉強しないと」
「少しだと思ったの？」
「全然」

そこで泪は笑うの。

「んー、でも、成績はちゃんと上位の方にいるよ、二人とも。基礎知識から勉強してそれなんだから、十分すごいとおもうな」
「成績でもヴィヴィオには追いついてないの」
「そりゃ、私の方は、サンクト・ヒルデで学んでる期間は長いよ」
「少しはお勉強が身になって欲しいかな。でも、魔法についてだって、留学して勉強してる私達より、魔法学についても研究を始めてる
　空木教授の方が詳しいかもね」
「上を見たら切りがないって」
「なのはおばさんを目指してるヴィヴィオがそれを言うの？」
「あはは、なのはママはまた特別だからね」
「レイジング・ハートの修理ってことで、早々に管理局に帰っちゃったよね、なのはおばさん」
「悪いことをしたでしょうか……手加減無しと言うことで、全力を出したんですが」
「別にアインハルトが悪いことをしたって思う必要はないさ。まあ、レイジング・ハートの強化は必要だろうって、なのはさんは言ってたけどな」
「そうかもしれません。でも、あれだけ全力でやっても、追いつけない人っているんですね」
「そりゃ鍛え方と鍛えた期間が違うからな。アインハルトが成長してても、なのはさんが同じ所にずっと立ってる訳じゃない」
「そうですね」
「とはいえ、里帰りも一週間だけなんだよね。その間にやるべき事をやらなきゃ」
「やるべき事ってなにかな？」
「そりゃ遊べるだけ遊ばないと。そうそう、DICEが新しいアミューズメントパークを作ったって知ってる、霧子」
「それはパパから聞いて知ってるの。開園前にみんなを招待してくれるって話だったの」
「どういう特別扱いなんですか、それ」
「んー、まあ、パパもママもDICEの関係者だから、そういう縁かな。
　でも、案内役が霰おばちゃんだから、当人が遊びたいだけかも」
「霰おばちゃんって？」
「戦いは無敵の人だよ。だけど、遊ぶのが大好きで、特に格闘ゲームは無敵ぶりを発揮してるかな」
「ビデオゲームなら、私達は勝ったためしがないの。金太郎建設ぐらいなら勝ちたいのに」
「金太郎建設って？」
「建設会社を運営して街を発展させていくゲームだよ。いろんな街にいろんな施設を作って、街を発展させていくの」
「それって面白い？」
「うん、面白いけど、霰おばちゃんが加わるなら……霰おばちゃん手加減しらないから」
「そんなに上手なんだ、霰おばちゃんって」
「戦いなら超一流、遊ぶ事なら超々一流てところ」
「そんなに強い方なんですか、お手合わせねがえないでしょうか」
「どうだろう。アインハルトさんなら手合わせしてくれるかもしれないの」
「どのくらい強い人なんですか？」
「地球最強級なの。地球最強がミッドチルダでどのくらいの強さになるかはわからないけど、とにかく理不尽なまでに強いよ」
「なのはママとどっちが強いかな」
「それは強いの定義次第だとおもう。
　霰おばちゃんは魔法使いじゃないから、管理局の局員としてはそんなに強くないかな。
　だけど、敵に回したときの恐ろしさは、霰おばちゃんの方が上かな」
「そんな化け物なの」
「化け物っていうか……歩く戦略兵器って言われるぐらいには強いの」
「なのはママだって、そんな言われ方はしてないよ」
「霰さんの話はそれくらいで良いだろう。
　霧子達の帰省中は、練習は軽めにする。おまえらだって、たまには遊びたいだろう。
　合宿がハード気味だった分、静養もしないとな」
「遊ぶので忙しいかもしれないの」
「ま、それはそうかもな」

次元航行船はミッドチルダから本局を経由して、地球まで向かうの。
ミッドチルダと地球の距離より、本局と地球の距離の方が近いの。

「そろそろ管理局本局だな。下船してやるべき事はあるか？」
「特になにもないの。お土産ならミッドチルダで準備してるの」
「そっか、なら、船内でのんびりしとくか」
「こんにちは、みんなインターミッドでは活躍したそうだね」
「あ、クロノ執務官、こんにちは」
「初めての人も居るみたいだね。じゃあ、自己紹介しよう。
　僕はクロノ・ハラオウン、管理局執務官をやっている。
　こんどの霧子達の帰省では、みんなの世話役をすることになっている」
「世話役ってノーヴェじゃないの」
「ノーヴェは民間人だ。何かあったときに責任が持てない。
　リンディ提督は第９７管理外世界に常駐して、管理局と第９７管理外世界との折衝に当たってる。
　だからといって、君たちの行動に責任を持つには忙しすぎる」
「管理局の執務官だって忙しいお仕事なんでしょ」
「その通りだが、このくらいの時間は取れる。
　一週間だけの話だ」
「クロノ執務官は、４月からずっとお仕事だったの？」
「まあ、そんなところだ。それでも今はそこまで忙しくない。
　大きな事件は起きてないからね。
　ちゃんと一週間に一日休みが取れるぐらいには仕事がすくない」
「それって仕事がすくない部類に入るんだ……」
「どうした泪、普通だろう。大事件が起きれば昼も夜もないのが管理局だ」
「あんまり働き過ぎると、体壊すと思うの」
「心配ない。大きな事件の後はまとまった休暇を取るようにしている。
　平均すれば一週間に一日の休暇はとれてる」
「でも、夏休みとかはないんでしょ」
「夏休み？　ああ、そんなものはないが、リフレッシュする時間は毎日確保している」
「ならいいけど……」
「さすがに、今回はやっかいごとで行く訳じゃない。それほどの問題は生じないはずだ」
「最初、クロノ執務官と会った時は、本当の大事だったもんね」
「プレシア事件か……過ぎ去ったことだ。
　反省点もあったが、それはちゃんと報告書に纏めて提出した」
「プレシア事件って、どこまでが機密事項なの」
「基本的に機密事項に指定されてるものはない、少なくとも、君たちが知っている限りの範囲では」
「次元断層を作ろうとプレシア・テスタロッサがした事件ですよね、それ」
「ああ、知ってるのか」
「そうだ、クロノ執務官は自己紹介してくれたけど、私達の自己紹介は……」
「必要ない、ちゃんと書類で確認した。顔と名前は一致している」
「そうなんですか」
「執務官には必要な能力の一つだ」
「クロノ執務官は、アミューズメントパークには来るの？」
「君たちと行動を共にするのが任務だ」
「そうなんだ。じゃ、一緒に楽しもう」
「楽しむ……僕は君たちの護衛兼監視役だ、あまり楽しむ余裕はないだろうな」
「そんなに仕事仕事で息が詰まらない？」
「そういうものでもない」
「そう……ちゃんと息抜きできてるならいいけど」

次元航行船は、本局を離れて地球へ向かってるの。
私達は、クロノ執務官を囲んで、他愛のない話を続けてるの。

「ヴィヴィオも、インターミッドの全国大会は秋からだから、一休みだよね」
「うん。それまでに力を付けておかないといけないけどね」
「U-15が冬だからって気を抜くなよ、インターンミッドはトーナメントだったが
　U-15は、ランキング制を採用している。まずランカーにならなきゃ、上は目指せない」
「どうやったらランカーになれるの」
「普通はU-15のいろんな大会に出て、ポイントを稼ぐんだ。
　早期にインターミッドで脱落したアインハルトとミウラは、夏が終わったら大会に出てポイントを稼ぐ必要がある」
「ボク達は？」
「リオ達インターミッドでの上位組は、その分がポイント加算されてるから、最初から出場資格があるはずだ。
　他にポイントで上回ってくる相手がいるようなら、調整をかねて大会に出るかもしれないけどな。
　そういうわけだから、冬に備えておけばいいって訳にはいかない。覚悟はしておけよ」
「はい」

こんな会話を交わしているうちに、船内アナウンスで、次元航行が地球へ近づいたと連絡があったの。
久しぶりの東京、久しぶりの家族との出会い。そしてフェイト達が待ってる地球への。

 

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