ウィンターカップとアインハルトさんのチャンピオン戦も終わると、冬休みがやってくるの。

「霧子、冬休みは里帰りする暇なさそうだね」
「そうなの」

そう、冬休みは夏休みほど長くないし、こっちでやることもあるから、里帰りに東京に帰るわけに行かないの。

「こっちでやることと言っても、遊ぶ事も多いけどね」
「そうなの。聖王生誕祭やこっちの新年なんかも体験したいし、そうしたら帰ってる暇ないの」
「霧子、泪、冬休みの予定を立ててるの？」
「そうなの」
「そうだよ、ヴィヴィオは？」
「冬休みって言っても、特別なにかあるわけじゃないし。あ、でも、聖王生誕祭の出し物はやらないとね」
「そうなの。うちのクラスはコロナが主導でゴーレムのダンスをやるって言ってたの」
「うん、聖王生誕祭前日はお祭り、聖王生誕祭当日は厳かにっていうのがうちの学校だからね」
「宗教系の学校だから、そこらはちゃんとやるんだ」
「そうだよ」
「新年はどうするの？」
「新年は個人個人の家で祝うんだけど、霧子と泪は里帰りしないの？」
「うん、こっちの新年の様子を見てみようと思って」
「そうなの。もうこっちにいられるのもそう長くないから、こっちにいる時間を大切にしたいの」
「そうなんだ、アインハルトさんは実家に帰るって行ってるから、うちにこない？　なのはママにも伝えておくね」
「お願い、ヴィヴィオ」
「うん」
「あ、リオ、コロナ、聖王生誕祭の準備は進んでる？」
「もちろん、教室の中にゴライアスを出す訳にはいかないけど、ちゃんと練習してるよ」
「大道具係として、いろんなもの作ってる。ヴィヴィオ達は小道具係だよね」
「そうだね。あと、前日には飾り付けもしないと
「そうなの。あと……やっぱり冬休みも宿題があるの」
「それは仕方ないって、ぼやかずに一つずつ片付けていこう」
「うん。手早く年内に終わらせて、新年は心落ち着けて迎えよう」
「おー」

意見がまとまって所で、私達はいつも通りにノーヴェのジムへ向かうの。

「よう、今日もまとまってきたな」
「はい、ノーヴェ、次はスプリングカップの練習だよね」
「確かにそうなんだが、スプリングカップの開催は4月だからな」
「霧子達は参加出来ないんだ」
「そうだな」
「それは大丈夫だってノーヴェ。私達は私達でちゃんと練習する理由があるから」
「そうなの」
「そうか、そう言ってくれると助かる。でも、理由って何だ？」
「んー、純粋に、バトルが好きになったからかな」
「そうなの。最初はヴィヴィオに勝つのが目的だったけど、今はそれは別にして、強くなりたいって思うの」
「そうか、じゃあ、スプリングカップ組と同じように練習していくぞ」
「はい」
「良い返事だ、じゃあ、ウォーミングアップからな」

いつものような練習、そしていつも通りの実戦形式のスパーリング、そしてクールダウン。

「どうした霧子、なんか遠い目をしてるぞ」
「うん、ちょっとね、この留学もあと4ヶ月で終わりになるのかなって思ったの」
「そうだな、でも、別にさよならだけが人生って訳でもないさ。
　第97管理外世界とこっちとでの留学計画はこれで終わりじゃないって聞いてるし
　こことの定期便が出来るって話もある。
　いずれまたあう事もあるさ」
「そうなの、だけど、こういう生活はあと4ヶ月で終わりなの」
「それはそうだな」
「霧子は考えすぎ。それより今を充実させようよ」
「泪の言うのはわかるの。だけど、何かさみしいの」
「それは私もだよ。だけど、今は目の前の聖王生誕祭の準備と、冬休みだよね」
「そうだね」

そして私達は帰途につくの。

「ヴィヴィオ、またね」
「またね、泪、霧子」
「またね〜」

リオは寮住まいだから、私達と一緒に帰るの。

「まだ授業は残ってるし、やることはまだ終わってないよ」
「そうなの、期末試験も残ってるの」
「だいぶこっちの魔法にもなれた？」
「うん、最初はちんぷんかんぷんだったけど、今はなんとかヴィヴィオに頼らなくてもわからうようになったよ」
「存在波を感じるっていうのは、まだわからないかな」
「あれは能力者の特技だからね」
「K-unit、存在波を感じる能力者、地球にもこっちにないろんな不思議なものがあるね」
「言うほど不思議かなあ」
「ミッドチルダは次元世界の最先端世界だと思ってたんだ。だけど、次元世界は広いなって」
「確かに、世界は広いの。留学出来てよかったって思うの。違う世界に触れることが出来て、感謝してるの」
「うん、でも、まずは目の前だよ、試験を乗り切ろー！」
「おー」

そう、試験が冬休み前の私達を待ち受けてるの。赤点取らないよう頑張るの。

「試験が終わったら、聖王生誕祭、そして新年、そして……」
「その先は考えない、新年が終わったら3学期だよ」
「3学期かあ、こっちで勉強したことを持って帰らないとね」
「おじいちゃんは興味あると思うの」
「空木教授もきっと知りたいんじゃないかな。だけど、教授はもっと深い魔法技術について知ってるかも」
「うん、そうだね。いろんな事をフェイトちゃんやユーノくんから聞いてると思うの」
「そうだったね、交換留学生だったんだ、霧子と泪は」
「うん、時空管理局のプロジェクトに誘われたの」
「ちょっとずつ次元世界と地球をつなげていく計画だって聞いてるよ」
「うん」
「第97管理外世界の話は、それなりにミッドチルダじゃ上がるようになってきたかな」
「なんで？　特になにも起きてる気はしないの」
「台風の中心にいると、無風地帯だからね」
「どういう意味？」
「優勝候補を次々撃破したインターミッドの新星が来た世界って事で、一般に知られるんだよ」
「あー、ベスト8止まりだったから忘れてた」
「ベスト8でも大したものだから」
「そういうリオもベスト8に入ってたでしょ」
「うん、コロナに負けたのは悔しいけど、その分練習に身が入るようになったよ」
「こうしてみると、今年もいろんな事があったね」
「まだ今年も終わってないよ、まだまだいろんな事が起きるよ」
「リオの言う通りなの」
「そういえば、聖王生誕祭ってなにを祝う日だっけ。聖王の誕生を祝う日っていうのは知ってるけど、オリヴィエの誕生日は違うよね」
「元は異教のお祭りを乗っ取ったって言われてるけどね。歴代の聖王の誕生を纏めて祝うんだよ」
「纏めてこの日になったんだ」
「そうだよ。詳しい話は、また聖王生誕祭の特別授業で習うと思うよ」
「そういうのがあるんだ」
「毎年サンクト・ヒルデじゃやるんだよ」
「そうなんだ、今年初めてだからわからなかった」
「特別授業ってあるけど、そういうのもあるんだね」
「地球には似たお祭りがあるって聞いたよ」
「あるの、クリスマスって言うの」
「どんな日かな」
「この日は聖王生誕祭と違って、一人の救世主の誕生を祝う日なの」
「一人しか救世主がいないの？　それじゃ大変じゃないかな」
「一人ですべての罪のあがないをしたんだってお母さんが言ってたの」
「大変だね、一人で全部背負い込むって」
「私もそう思う。だから多分一人の誕生だけど祝うんじゃないかな」
「そうかもね。それで、具体的にはなにをするのかな」
「パーティを開いて、ケーキを食べて、プレゼント交換をして、そして大人の人はシャンパンっていうお酒を飲むの」
「こっちの聖王生誕祭とあんまり変わらないね」
「そうなんだ」
「体験すればわかるよ」
「でも、楽しい聖王生誕祭を迎えるには、まず試験勉強だね」
「あー」

そう、先苦後楽、楽しいことの前には、苦労が待ってるの。
だけど、試験勉強と試験を乗り越えたら、楽しい聖王生誕祭が待ってるの。
クリスマスは体験したことがあるの。だけど、聖王生誕祭のお祭りはどんなことをするのかな。


 

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