ここは、藍仙高校の校門前なの。
私、雲野霧子は、友達の柊泪と一緒に藍仙高校へ来たの。

「霧子、入って良いのかな」
「受付までは入っていいと思うの。
　とりあえず、パパかママが居ると助かるの」
「そうだね。受付までは行ってもいいかな」

受付で、名前を名乗って、パパかママと連絡が取れるか聞いてみるの。
パパもママも部活を見てるから忙しいらしいの。
だけど、ママは受付まで来てくれることになったの。

「カスミおばさんが来てくれるって？」
「うん、そうなの。ママでも、このオーパスが何か分かるかもしれないけど
　やっぱり、アインハルト先生に見てもらった方が確実なの」
「そうだね。アインハルト先生って、……、あ、カスミおばさん、こんにちは」
「こんにちは、ママ」
「泪ちゃんこんにちは。霧子、高校に来るなんて、一体何があったの」
「あのね、ママ、下校途中に野良ディゾナントに出会ったの。
　それで、野良ディゾナントは倒せたんだけど、落としたオーパスがなにか見たこともないようなものだから
　アインハルト先生に見てもらおうと思ったの」
「野良ディゾナント？　今時そんなものがいるなんて、物騒じゃない。
　大丈夫、怪我なんかしなかった？」
「それは大丈夫なの。持ってるオーギュメントは野良ディゾナントなんかにまける性能じゃないから」
「確かに、相応の性能は与えてあるけど、だけど、危険なこと……って、言っても無駄だよね。
　ディゾナントは向こうから向かってくるし、放置すると周りの人が危険だから」
「それで、ママ、このオーパスのことだけど、何か分かる？」
「ええと……これは私も見たことないね。
　ＤＩＣＥが作った物じゃないのは確かみたい。
　やっぱり、アインハルト先生に見てもらった方がよさそう。
　アインハルト先生に連絡取るね。泪ちゃん、霧子。二人とも一緒に来て。
　アインハルト先生が何か聞きたい事があるかもしれないから」
「うん、分かったの」
「カスミおばちゃん、そうします」

ママの先導で第２科学部の部室へ移動するの。
第２科学部も由緒ある部活動なの。
昔はパパやママや霰おばちゃんも所属してたの。
第１科学部の顧問がママで、第２科学部の顧問がアインハルト先生なの。
第１科学部は、普通のどこにでもある学校の科学部なの。
だけど、第２科学部は、まず他の学校にはないと思うの。
だって、第２科学部が扱ってるのは、オーギュメントを主体にした存在波研究だから。

「アインハルト先生、失礼します」
「カスミ先生か、どうぞ」

アインハルト先生は、私にとってある意味おじいちゃんなの。
だけど、おじいちゃん、というには血縁がないから
私が呼ぶ時にもアインハルト先生なの。

そこらあたりも事情はあるんだけど、今は省略するの。

「アインハルト先生、ちょっと聞きたいことがあるの」
「アインハルト先生、先生なら分かるかと思って」
「泪ちゃん、霧子、何かあったのかね」
「うん、野良ディゾナントが落としたオーパスなんだけど、
　正体が分からないから見てほしいの」
「どれどれ、これがそのオーパスか……」

興味津々といった感じでアインハルト先生がオーパスを調べるの。

「ふむ……出してる存在波が奇妙だね。
　普通のオーパスなら、自分が何物かを主張するものだが
　このオーパスからはそういう意味での存在波を感じない。
　いや、何物かである存在波は当然出ているのだが
　なんの存在波か見当もつかないね」
「アインハルト先生でも見当がつかないの？」
「私だって神様じゃない、なんでも分かるというわけにはいかないよ。
　ただ、いろんなオーパスを見てきたつもりだし、オーギュメントも見てきたが
　こんなオーパスは初めてだ。世の中は広いね」
「それじゃ、何も分からないということなの？」
「何も、という訳じゃない。少なくともこのオーパスはＤＩＣＥが製造したものじゃない。
　他の国が作ったにしても、ＤＩＣＥ系の技術で作られた物じゃないことは分かる」
「アインハルト先生、我々が知ってるオーパスは、すべてＤＩＣＥ系の技術で作られてるはずです。
　あのロシア製のオーパスだって、基礎技術はＤＩＣＥのものだったでしょう」
「カスミ、……いや、カスミ先生、確かにその通りだ。
　既知のオーパスならすべてＤＩＣＥ系の技術で作られてると言っていい。
　しかし、ＤＩＣＥ系の技術で作られたオーパスなら、私に正体が分からない、ということはないはずだ。
　これはＤＩＣＥ系の技術で作られたオーパスじゃない」
「ということは、誰かがＤＩＣＥの技術とは別にオーパスやディゾナントを作る技術を手に入れたと言うことですか」
「あるいは、我々の知らない世界からもたらされたオーパスか……」
「宇宙人が来たとでもいうんですか？」
「可能性はある。　霰から連絡があったよ。
　なんでも、何もないはずの宇宙空間で何らかのエネルギー反応があったそうだ」
「何もないはずの宇宙空間で？」
「ああ、某国の宇宙監視機関と、アマチュア天文学者が同時に確認してる、まず間違いないな」
「霰がアメリカに飛んだのって、それがらみなんですか？」
「そうらしい。宇宙での謎の現象を調べてるそうだ。
　私には関係ないと思ったが、そうもいきそうにないな」
「ねえ、アインハルト先生」
「なんだね、泪ちゃん」
「このオーパスって、宇宙空間からやってきたの」
「分からないね。ただ、そうだとしてもおかしくはない」
「宇宙人ってどんな格好してるのかな」
「霧子、宇宙人って決まったわけじゃないよ」
「だけど泪、ディゾナントは人間の格好をしてるのが普通なの。
　毛玉みたいな格好をしてたけど、そんな格好の宇宙人がいるかもしれないの」
「どうだろうね。そこらも含めて調査してみないとわからないな。
　とりあえず、このオーパスは空木君のところへ回すとしよう。
　あそこなら、私の所より詳しく分析できるはずだ」
「空木教授のところなら安心だよね」
「そうだと思うの」
「じゃ、泪ちゃん、霧子、そろそろ帰る時間よ。
　日が暮れるまでには二人ともおうちに帰らないといけないでしょ」
「はーいママ、そうするの」
「はい、カスミおばちゃん、ではまた」

そういうわけで、私達は藍仙高校を離れたの。
だけど、その帰りに出会う存在があるなんて
私達が能力者でも想定できなかったの。
 

 

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