私達は、今喫茶店でくつろいでるの。
誠志郎おじさんは、切れ目なくゆっくり、確実に料理を平らげてるの。

そんなのんびりした時間は、クロノ執務官への呼び出し音で遮られたの。

「はい、クロノです。リンディ提督、何事です？
　はい、あ、……わかりました。僕はすぐにそちらに向かいます」
「クロノくん、何があったの？」
「霰さん、この世界に向けて、管理世界エルトリアより、転送があったと通報があった。
　管理世界から管理外世界への無許可接触は違法だ。
　僕は転送してきた誰かを見つけて、確保しなければならない」
「気をつけてね、クロノくん」
「そうさせてもらう。済まない、案内が十分に出来なくて」
「それは謝ることじゃないと思うの。それがクロノ執務官のお仕事なの」
「そう言ってくれるとありがたい。じゃあ」

そう言うと、クロノ執務官は転移して消えるの。

「管理世界からの転送って、何事なのかな」
「それはわからないよ。でも、クロノくんが適切に対処するんじゃないかな」
「でも、地球も広いよ」
「その通りだな。存在波を拾って見つけるにせよ、どんな存在波かもわからないでは対処のしようがない」
「園宗寺さん、そろそろ行きましょうか」
「そうだな。柊、十分食べたか」
「十分じゃないが、まあ、それなりには」
「そうか、まあ、ここは私のおごりにさせてくれ」
「それじゃ悪いよ、柊一人でどれだけ食べたことか」
「それだからだ」
「わかったわ、じゃあ、遠慮なくごちそうになるわね」

そう瞳おばさんは答えたの。
私達は、次のアトラクションは何にするかで盛り上がってたの。

「まだまだここは広いよ、どこに行く？」
「海中公園も散策しましたし、高い所は行きましたけど、こんどはどうしましょうか？」
「プールあるかな、プール」
「プールはあるが、今はまだ閉鎖しているな」
「それは残念」

泪は、本当に残念そうに園宗寺さんへ答えるの。

「園宗寺さん、本部から連絡です」
「わかった、……私だ、園宗寺だ。何が起きた？
　ああ、そうか、……私もすぐに日本支部に向かう。情報収集を怠らないように」
「何があったの、園宗寺さん」
「霰、どうやら、第２の侵入者がエルトリアから訪れたらしい。
　管理局はこれに介入すると言っているが、地球側としても管理局だけにすべて任せるというわけにはいかない。
　私は地球側と時空管理局とのすりあわせをする。
　忍、ついてこい」
「わかりました」
「霰、そういうわけだから、ここの案内は任せる」
「任せられてもいいけど、このアミューズメントパークについてはそんなに知らないよ。
　海中公園のオーパスの警護ていうのが、私の仕事に割り当てられたんだけど
　アミューズメントパークの方は、そんなに興味無いから、調べてないし」
「それでかまわない。とにかく、彼らを護衛してほしい」
「うん、わかったよ」
「よし、では我々は行こう」

こうして、園宗寺さんと、そのボディガードの忍さんも、この場を離れたの。
私達はちょっとおいてけぼりになるの。

「あは、やっぱり忙しい人たちだね☆　のんびりアミューズメントパークを散策なんてできないんだよ」
「霰おばちゃん、そんなのんきな」
「じょぶじょぶ☆　侵入者といっても、そんな大規模な侵略者じゃないみたいだし」
「大規模な侵略があったら困るの」
「ま、大概の敵ならDICEの特殊部隊に勝てるわけないよ。
　それはともかく、せーしろーくんもそろそろ食べ疲れてるだろうから」
「俺はまだ疲れてはないぞ」
「はいはい、柊、今日の主役は子供達なんだから、あんたはフォローに回る」
「へいへい」
「で、どうするんだ？」
「私は何か体を鍛えられそうな所がいいんですが」
「体を動かすのには賛成！」
「それはいいが、そんなところがあるのか？」
「うーん、私に聞かれても。
　とーやくん、とりあえずマスターに聞いてみようか」
「そうだな、霰、頼む」
「うん、ちょっとみんな待っててね」

そう言うと、霰おばちゃんは、喫茶店のマスターに話を聞きにいったの。

「管理世界からの侵入者……」
「フェイトが気にするのはわかるよ。だけど、今回異世界から……」
「……気づいたよね、ユーノも」
「どういうこと？」
「私が母さんからこの世界に送られてきたのは、異世界からの発掘品、ジュエルシードを集めるためだった。
　管理世界から管理外世界へわざわざやってくるとしたら、管理外世界にあるロストロギア目当てというのが可能性が高い」
「でも、……まさか、あの封印になってるオーパスを狙って？
　だけど、あれはロストロギアみたいな危険物じゃないって、霰おばちゃんは言ってたよ」
「それはそうなんだけど。だけど、嫌な予感がするんだ」

霰おばちゃんが、ニコニコしながらこっちへ戻ってきます。

「時空管理局からDICEを経由して地球側へ要請があって、管理局法に基づき管理世界から転送されてきた何かを探したいって言ってるって。
　地球側もそれに合同でやることになったから、私もそっちに行かなきゃいけなくなったの。
　ごめんね、せっかくなのに、みんな出払うことになっちゃて。
　あと、プール以外に体を動かせるところっていったら、簡易的なクライミングウォールとかある場所があるってさ。
　場所は聞いてあるから、そっちにみんなで行くといいと思うよ」
「ありがとう、霰おばちゃん」
「泪、礼には及ばないって。
　じゃ、私は行ってくるね」

そう言うと、霰おばちゃんは跳躍して消えたの。

「みんな慌ただしく出て行きましたね」
「そうだね、アインハルトさん」
「……」
「フェイトは心配しすぎなの」
「うん……だけど……」
「そんなに心配なら、みんなであの封印されてたオーパスの所に行きましょうか」
「コロナさん、ありがとう」
「コロナでいいよ、私もフェイトって呼ばせてもらうから」
「ありがとう、コロナ」
「行こうか」

こうして、私達はまた海中公園にある、オーパスの所へ向かって行ったの。

「ん？　どうした、P-3」

P-3、この世界を動かす動力源、K-unitのオリジナルにして、私の乳母代わりなの。
世界で唯一の第三世代オーギュメントでもあるの。

「霰から連絡なの。
　侵入者のうちの一人が、こっちに向かってるって。
　で、それとは別に、都内各所でスクラップ待ちの機械が暴走する事件が起きてるみたいなの。
　霰はそれに対処するって。こっちに向かってる侵入者には、クロノ執務官が対応するそうなの」
「わかった」
「十夜くん。それって大事じゃない」
「大事かもしれないが、俺たちの出る幕じゃない。
　クロノ執務官が侵入者に対応するって言ってるんだから、俺たちはそれを信じた方が良いだろう」
「で、俺たちはどうするんだ？　やっぱりあのオーパスんとこ行くのか？」
「他に出来ることもないからな」

パパと誠志郎おじさんの間で話がまとまったの。
それはフェイトの意志とも同じなの。

私達は、オーパスのある海中公園へ向かったの。

「！」

その、海中公園のオーパスの前には、１人の人影がいたの。
いや、正確には、１人と１人のホログラムかもしれないの。

「誰？」
「キリエ、ちょっとだけ時間を稼いで」
「イリス、わかったわ」
「させない」

フェイトが２人？　それとも１人と幻影？
とにかく、フェイトがそれに飛びかかっていくの。

「遅いわ」
「きゃ」

フェイトよりキリエって呼ばれた女の子〜といっても、歳はおそらくアインハルトさんぐらいなの〜の方が早かったの。
信じられないの。フェイトは私達の中でもかなり早い方なの。

「SC空間を展開、オーギュメントを起動します」

オーギュメントの無機質な声が響くの。
SC空間を展開したのは、P-3。ここを壊さないように戦うには、必要なことなの。

「閉鎖空間！」
「大丈夫、キリエ、もう……起動した」
「じゃあ……」
「……ええ、これで、封印が解ける」
「封印を解かれたら困るの」
「どうして？」
「それは、安全かどうかわからないものだからなの」
「これは、パパの病気を治すのに必要なことなの。邪魔しないで」
「それなら、ちゃんとした手続きを踏んで来るべきだったな。
　こういうやり方じゃ、泥棒と変わらないぜ」
「おじさん、私達には時間がないのよ」
「そうだな、確かに時間はねえ」

そういうと、誠志郎おじさんはオーギュメント、バルバロスのカレイドフェノムを放つの。

「どこ狙ってるの」
「見りゃわかるだろ」
「私はここよ」
「おまえを狙ったんじゃねえ」
「つ……」
「イリス！」
「大丈夫。もう……封印板から私の実体を取り戻すことが出来た」
「実体？」
「実体？」

キリエと、私達は同時に同じ疑問を発するの。

「イリス、実体って……」
「……そう、封印された私の実体がここにあるの。
　そして、切り札も」
「切り札って？　あなたたちはなにをしようと？」
「あなたたちには関係ないわ。私はエルトリアとパパを救うの」
「エルトリア……では、あなたたちが、エルトリアから来た侵入者なのね」
「そうよ」

あっさりと、キリエって呼ばれた人はそれを認めたの。

「そのオーパスに何が封印されてるの？　どうして無断でその封印を解いてしまうの」
「私達には、時間がないの」

押し問答なの。
だけど、エルトリアからの侵入者が、このオーパスの封印を解きに来たのははっきりしたの。
その封印されたオーパスから何がでるか、それはまた次のお話なの。

 

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