「キリエ、とにかく閉鎖空間の外へ」

キリエとイリスは、SC空間の外へ脱出しようとするの。

「P-3、SC空間強化」
「了解、トーヤくん」

P-3はこの部屋に展開されたSC空間を強化するの。
普通の相手なら、これでもう脱出は不可能なの。

「っ……どうやら、一戦交える気かな？」
「あのデバイスが閉鎖空間を強化してる、あれを破壊出来れば……」
「P-3を破壊させるわけにはいかないよ」
「強気になるのも今のうち、切り札ユーリの力を持ってすれば、この空間を破壊することも、デバイスを破壊することも出来る」
「ユーリ？」
「ほら、もう復活した」

オーパスに封印されていた何か、それは、金髪の女の子でした。

「あれが、ユーリ？」
「そうよ。ユーリ、閉鎖空間打破、脱出するよ」
「……どうして？」
「これは命令よ、ユーリ、閉鎖空間を打破しなさい」
「……はい……」

ユーリと呼ばれた女の子は、閉鎖空間打破を命じられて、SC空間を解除すべく外界からの存在波を取り入れようとするの。

「ちょっと空間維持に負荷がかかってるみたいなの。オリジナル、瞳さん、誠志郎くん、援護に入って」
「わかった」

P-3がオリジナルって呼んだのは、カスミママ、カスミママがどうオリジナルなのかは、P-3シリーズを読んでもらうとわかるの。
カスミママと、瞳おばさんと、誠志郎おじさんは、P-3に同期を取って、SC空間維持に力を回すの」

「さて、ちびちゃんたち、あの２人を取り押さえるんだ。エリトリアからの侵入者だと認めた以上、管理局に引き渡さないとな」
「わかったの」

私達は、SC空間が維持されてるうちに、あの二人を捕まえることにするの。
ユーリって呼ばれた女の子は、SC空間打破に専念してて、あの二人を捕まえた後でも間に合うはずなの。

「っ……」
「P-3、どうしたの？」
「ユーリって子、単体だけどかなりの力の持ち主みたいなの。SC空間の維持が難しくなってきたの」
「じゃ、手早く行くの、泪！」
「O.K」
「あは、私達も員数に入れてよ」
「そうだね」
「私とコロナさんは回りを警戒します。霧子さんと泪さんはキリエさんを。
　ヴィヴィオさんとリオさんはイリスさんを」
「わかったの」
「了解〜」
「了解、いくよ、リオちゃん」
「まかせて」
「数で勝れば勝てるつもり？」
「勝つんじゃなくて、取り押さえるんだよ」
「私を敵に回して、数で勝とうだななんてね」
「どういう意味？」
「こういう意味」

そう言うと、イリスって人は、次々と仮面を付けた分身を生み出したの。

「数ならこっちが上ってこと」
「分身の弱点なら、ジークさんが教えてくれたよ。
　作れば作るほど……」

そう言うと、ヴィヴィオさんは魔法弾を多数用意するの。

「リオは接近戦を、私が援護射撃するね」
「いいよ、近づいて……叩く！」

ヴィヴィオの魔法弾は、次々と分身を破壊していくの。
それを見たイリスは、少し顔色を変えるの。

「子供とみて侮ったかしらね」
「気にしない、こっちも手加減抜きで行く」

そう言うと、キリエって人は、拳銃様のものをもちだしたの。

「死にたくなければ関わらないで」
「死にたくもないし、あなたたちを放置も出来ないの」
「霧子、私が後方援護に回るね」
「ありがとうなの、泪」

泪がカレイドフェノムで目くらまし弾を放ってくれるの。
そのすきに私は一気にキリエって人に突っ込むの。

「スピード勝負で私に勝てるつもり？」
「な、この人、早いの」

私も早さでは人後に落ちないつもりだけど、キリエって人はそれより早いの。
キリエのパンチをガードするのが私にはやっとなの。

「アルフ、加勢する」
「わかったよ、フェイト」

カレイドフェノムを撃たれないように、キリエって人は私の至近距離にいるの。
私は反撃の機会をうかがうんだけど、キリエには隙がないの。
それに、キリエは一撃が重いの。
鍛え方が違うのかな、とにかく、肉体面じゃ私よりはるかに上なのは感じるの。

「これで、おしまい！」

キリエがすっと離れると、拳銃を再び構えて撃ってくるの。

「フォトンランサー・ファイヤ」

拳銃を構えたキリエに、稲妻の魔法弾が襲いかかるの。
距離を下手にとったことで、フェイトに隙を与えたみたいなの。

キリエはそれをガードするの。

「霧子！」

泪に言われなくてもわかってるの。攻守はこれで逆転したの。
ゴッドスレイヤーはチャージしてないから撃てないけど
ロンギヌス・スピアを使ってキリエを攻撃することなら出来るの。

「く……」
「さすがに３人がかりじゃそれだけの肉体があっても、勝ち目はないの」

間合いを詰めようと動くのを、ロンギヌス・スピアで私は牽制するの。
そして、動きが止まれば、こんどこそ強力な魔法やカレイドフェノムが来る事は、キリエも理解してるみたいなの。

「……作戦変更、ユーリ、閉鎖空間打破だけに専念せず、キリエに加勢しなさい、命令よ」
「……はい……」

ユーリって子が、こっちに向かってくるの。
動きはキリエほど速くないけど、多分パワーなら、キリエより上だと思うの。

「ジーザス・ライトニング！」

泪の必殺技がユーリに直撃するの。
本来は、対キリエ用にチャージしてたはずなの。
だけど、状況の変化に応じて、援護に来たユーリを迎撃したの。

「うそ……」
「……このくらいの攻撃では、私はびくともしない……」

ジーザス・ライトニングの威力は、私のゴッドスレイヤーを上回るの。
それなのに、直撃を受けても、打撃を受けたようには感じないの。
この子って一体……

「じゃあ、こんどは私の番……」

そう言うと、ユーリは魔法弾を次々と放ってくるの。

「泪、よけて」
「霧子もね」

お互い、濃密な魔法弾を前に、受けるのが精一杯になるの。
どうやら、ユーリちゃんが真打ちかな。でも、命令してるのは、イリスの様なの。

「アルフ、アルフはキリエの牽制を」
「フェイトは？」
「ユーリを止める」

そう言うと、フェイトはユーリに向かって行くの。
でも、ユーリの魔法弾はフェイトにも飛んでいくの。
フェイトはこれをバルディッシュで切り伏せながら間合いを詰めようとするの。

「もらった」

動かず魔法弾を放つだけのユーリに、フェイトがバルディッシュで斬りかかるの。
だけど、ユーリはそれを身につけた鎧ではじき返すの。

「全然効かない？」
「魔法力が段違いみたいですね」

アインハルトさんの言う通りなの。ただでさえ、第３世代オーギュメントP-3と、それを援護するパパ達を釘付けにしていて
さらに、私達に魔法弾の雨を降らせ、フェイトの攻撃をはじき返す。信じられないパワーなの。

「とはいえ、鎖は一番弱いところから切れるんだよ」

アルフさんが、キリエに向かって行くの。
キリエはアルフさんの攻撃をかわしながら、銃を撃ってくるの。

「あの、私も加勢した方がいいでしょうか」
「いえ、何か嫌な予感がするんです。コロナさんはそのまま待機を」
「大丈夫なんですか？」
「３人を相手に完全に後れを取ることはないと思ってます」

信頼してもらうのはいいけど、とてもその信頼に応えてるとは言えない状況なの。
ヴィヴィオは、次々と現れるイリスの分身を叩くので手一杯。
リオはイリスの本体に近づくけど、殴り合いで優勢ではない。
私と泪とフェイトは、ユーリ一人に翻弄され、アルフさんはキリエ相手に受け太刀。
これでどう行動すべきかわからないの。

でも、転機は一度に来たの。

「ユーノさん、そろそろいいでしょう、分身を出すのにも疲れてきたはずです」
「わかったよ。バインドを掛ける！」

そう言うと、ユーノはイリスにバインドを掛けるの。
イリスはバインドブレイクを試みるけど、動きが止まったのを見逃すリオじゃないの。
リオの一撃がきれいにイリスを捕らえるの。

「トーヤくん、SC空間に侵入者」
「誰だ？」
「イデア情報に覚えがないから、多分新手なの」

その、新手は、すぐにここへ現れたの。

「何やってるのキリエ」
「お姉ちゃん……」
「エリトリアに帰りますよ。そこで裁きを受けましょう」
「断るわ。私は、パパと星を救うの。もうそのための鍵は手に入れた。
　後はここを脱出してエリトリアに向かうだけ。裁きを受けるのは、パパと星を救った後よ」
「まだそんな戯れ言を……」
「戯れ言じゃないさ」

SC空間には、キリエからお姉ちゃんと呼ばれた人物以外いないはずなの。
それなのに、私達がまったく知らない存在波をもつ人物が現れたの。

「やれやれ、ここを脱出した後で登場するつもりだったのだがね。
　予定より早まってしまった」
「あなたは誰なの？」
「誰でもいいだろう」

そう言うと、新たに現れたおじさんは、リオを一撃で吹き飛ばすの。

「イリス、目を覚ましなさい」
「はい……」

謎のおじさんは、リオの連打を受けてふらふらだったイリスに活を入れるの。
どうやら、それでイリスは立ち直ったみたいなの。

「やれやれだねえ、君たちにも不幸なはなしさ。
　私が出る前に、素直にこの子達を脱出させていれば良かったのに。
　私はこの子達のように甘くないよ。……子供であろうと、私の行く手を遮るなら、死んでもらう」

私と泪、そして多分カスミママと瞳おばさんには完全にわかったことだと思うけど、今の言葉には嘘偽りがないの。
本当に、あのおじさんは私達を殺すつもりなの。

「行く手とは、なんですか？」
「威勢の良い子だね、冥土の土産に教えて上げるさ。どうせすぐわかることでもある。
　エルトリアを救うんだよ。……この星のすべてを奪うことでね」
「そんなことはさせません。キリエ、それが望みなの」
「え、……そんな話、私も初めて聞いた。イリス、どういうことなの？」
「イリスに聞いても分からないさ、イリスは私のゆりかご。この子の中でしばらく私は眠ってたのさ。
　イリスはユーリを復活させることだけを考えて、そのためにキリエ、君を利用したんだ。
　星と君のパパを救う鍵があるというのは本当だよ。
　ただし、その方法が、キリエたちの思ってることとは違っただけでね」
「……そんな……」
「キリエ、これでも、帰らないというの？」
「……イリス……もしかして、あなたは……」
「キリエ、私はあなたのことが嫌いな訳じゃないわ。だけど、私も自分のするべき事があった。
　そのためにあなたを利用させてもらったの。ユーリを復活させること。それが私の任務」
「どうして……」
「そうイリスを責めないでやって欲しいな。この子は私のプログラム通りに動いただけの人造人間なんだからね。
　ユーリとイリスの力で、若い星の力をエリトリアに流し込むんだよ。それが私の描いたエリトリア再生の道さ。
　わかったら、君たちもおとなしくしなさい。エリトリアを救いたい気持ちは君たちにもあるんだろう」
「私はあなたを許さない。絶対に止めます」
「命は一つだよ、アミティエ、大切にしたまえ」
「……この星に息づく命も、一人ずつ一つあります。私はそれを守ります」
「聞き分けのない子だね」

そう言うと、謎のおじさんは強烈な魔法を放つの。
お姉ちゃん……アミティエさんは、その魔法を受けて倒れ込んでしまうの。

「お姉ちゃん」
「ああ、君もだね」

謎のおじさんは、魔法弾を放って、キリエさんも倒してしまうの。

「心配しなくていい、私だって、エリトリア人を手に掛けるほど外道じゃないさ。
　が、君たちは別だ。この星の住人達は、遠慮なく殺戮させてもらうよ。
　ふふ、ここは夢の国さ。必要なものはなんでも手に入る」
「やらせません」

アインハルトさんが、すっと一歩前に出るの。

「あなたは、私が止めます」
「君一人でかい？　思い上がるのも大概にした方が良い」
「アインハルトさん……」
「この人には、私一人で対峙します。他の皆さんは、ユーリさんと、イリスさんを止めて下さい」
「アインハルトさん、それはさすがに……」
「無茶かも、しれません。ですが、証明したいんです」
「証明？　　なにをかね？」
「覇王の拳は、人を救うための拳だということを」

 

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