私の名前は雲野霧子、サンクト・ヒルデに留学中なの。

「なんか私達の学年って時々ぶれてる気がするの」
「てーくいっといーじ」

それはともかく、私達は１年で留学は終わりなの。
だけど、ちゃんと学期末試験はあるの。

「それが終わったら留学も終わりだよね」
「そうなの」
「やっほー」
「あ、ヴィヴィオ。本を抱えて試験勉強なの？」
「そうだよ。三学期末の試験は、進級試験だから、一年分出るからね。
　その分勉強して臨まないと行けないよ。範囲が広いから山は外れやすいし」
「そうなんだ」
「霧子や泪は？」
「落第って結果で帰りたくないから、勉強もやってるよ」
「そうなの」
「じゃ、一緒にやろうか、一年の振り返りだね」
「だね」

そういうわけで、ヴィヴィオと一緒にお勉強なの。

「翻訳機頼みだったから、ミッド語〜こっちの国語〜は免除だね」
「なのはママはミッド語が普通に話せるよ」
「そりゃ年季が入ってるから」
「あはは、そうかも。機械頼みだと綴りも忘れちゃうよね」
「そうれはあるかもしれないの」
「でも、魔法は実技もあるからね。それも練習しないと」
「実技かあ……オーギュメント……デバイスは使っていいのかな」
「それは大丈夫だよ。だけど、カンニングは禁止だからね」
「自分のは使っていいんだ」
「そうだよ、私もクリスを使うし」
「インテリジェンスデバイスはいいの？」
「教えてもらわなければ大丈夫」
「私達のはオーギュメントだから、こちらで言うインテリジェンスデバイスじゃないよね」
「自我がないんだ」
「そうなの」
「P-3は例外だけどね」
「なんでインテリジェンスデバイスを作らないの？　便利なのに」
「色々事情があるみたいなの。そういうのはアインハルトおじいちゃんが詳しいの」
「世界が違えば事情も違うよね」
「そうなの」
「だから、留学っていう話しになったのかな。クロノくん……クロノ執務官の発案らしいけど」
「そうなんだ。だけど、２人の小学生がこっちに来て、代わりに小学生２人が地球に行って、なにがわかるのかな」
「なのはママの故郷でなにがあるかはわからないけど、こっちには、確実に影響があったんじゃないかな」
「そんなものなの」
「管理外世界出身者がインターミッドでベスト８に入るとか、破天荒な出来事だよ。全国紙にも載ったぐらいだし」
「そうなんだ。新聞とか読まないから全然わからないの」
「そういえば、こっちの世界の新聞って結局一度も読んでないよね」
「だけど、あることはあるんだよ。確かに、インテリな人が主に読んでて、普通の人はなしで済ませてるけど」
「そういうのも、私達の世界と大差なくなってるかな」
「そうなんだ」
「それはともかく、試験勉強をしないと。実技って授業でやったことが出来ればいいんでしょ」
「そうだけど、一発勝負だから練習しておかないと大変だよ」
「そうだね。じゃあ、練習に行こうか。ここじゃ手狭だし」
「そう思うの」
「じゃ、しゅぱーつ」

そういうわけで、私達は学校の魔法実習場へと向かうの。

「リオ、コロナ、こんにちは〜」
「こんにちは」
「こんにちは」
「二人も試験の実技の練習？」
「そうだよ」
「私達もそのために来たんだ」
「うん、私もちゃんと出来るようにしておかないと」
「コロナは余裕じゃない？　実技試験はいつも満点だし」
「でも、油断してるとミスするかもしれないし」
「コロナで油断大敵なら、私達はもっと大変なの」
「でも、いい成績なのは霧子や泪も一緒だよ」
「留学に来たんだから、何かは学んで帰らないといけないの」
「物見遊山じゃないものね。
　だけど、もっと肩の力を抜いていいと思うよ」
「コロナが言うかなあ」
「あはは、ともかく練習練習、気楽にやって出来るようになればきっと大丈夫だって」
「そうだね」

そういうわけで、練習を始めるの。
やっぱり一番スムーズに実技をやってるのはコロナなの。
ヴィヴィオも上手なんだけど、コロナほどじゃないの。
私達はようやくやってる感じなの。

「私達は１年生からやってるからね。積み重ねた量が違うよ。
　おんなじようにされたら私達の立場がないよ」
「そうかもしれないけど、せめては及第点」
「落第はしたくないの」
「試験に通って胸を張って帰りたいよね」
「そうなの」
「じゃ、もう一回やってみようか」
「はーい、コロナ先生」
「えー、私は先生って柄じゃないよ」
「積み重ねた量が違うんでしょ」
「そりゃ私が言ったんだけど……リオも意地が悪いなあ」
「あはは、ま、私達の中で一番うまいのがコロナなのは事実だし」
「……じゃ、もう一回みんなでやろうか」

１時間ぐらい練習をして、私や泪もぎこちなさは消えたの。

「さて、時間だし、ノーヴェのジムに行こうか」
「りょうかーい」

そういうわけで、私達はノーヴェのジムへ向かうの。

「ノーヴェ、こんにちは」
「こんにちは」
「ちょっと遅かったな。なにをやってたんだ？」
「試験勉強なの」
「そうか、それも大切だよな。
　とはいえ、格闘も続けるつもりなら、練習は大切だぞ。
　さあ、アップから始めるぞ」
「はい」

私達はアップをしてから、再び集合するの。

「霧子と泪はあと３週間でここを離れるんだな。
　心置きなく離れるために、何かここでやっておかなきゃならないことがあるか」
「んー、あったんだけど、もうどうでもよくなったかな」
「泪もなの？　私もなの」
「どうでもよくなったって、どういうことなんだ」
「ヴィヴィオに勝ちたかったんだけど、もうそれはどうでもいいかなって」
「始めたきっかけはそうだけど、今は違うの」
「別に練習試合ならやればいいと思うけど、それはいいのか」
「そうなの。ヴィヴィオより強くなるとか、ヴィヴィオに勝つとかより、もっと大切な物がある気がするの」
「そっか。それなら良いけど、参考までに、それがどんな物なのか言葉に出来るか？」
「あんまりうまく言えないけど、ほんとうに大切なことは、誰がだれより強いかって事自体より、自分の課題に向き合うことかなって」
「ヴィヴィオに勝って終わりたいって思わないっていえば嘘になるの。だけど、格闘でヴィヴィオをダウンさせても、
　私がヴィヴィオに勝ったことにはならないとも思うの。
　ヴィヴィオが夢を叶えたとき、私達も私達のゴールにたどり着けたら、そのときヴィヴィオに追いついたことになるような気がするの」
「そうか。まあ、気が変わったらまた考えれば良いさ。
　それじゃ、アップも終わったし、普通にスパーリングに入るぞ」
「はい」

ノーヴェが言葉に出したけど、あと３週間、試験まではあと２週間なの。
それまでに出来ることをやり尽くして、試験を超えて、胸を張って「留学して良かった」と言えるようにするの。



 

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